志那羽尾岩子
@37CFgE8bwimoue3M
2025年11月から利用
過去最高ランキング
※入賞回数:10位以内の回数
- 共振する空白
その記録は、ある音響技師が廃業を決めた際、馴染みのバーで「一度だけ、機材では説明できないノイズを拾った」と語った断片に基づいている。 舞台は、都心の再開発地区に建つ最新のデータセンター。そこは二十四時間、空調の唸りとサーバーの排熱が支配する人工的な静寂の空間だった。建物の最上階、四十四階にあ...
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0chat_bubble 054 views3時間前 - 抜け落ちた時間帯
終電が引き返していく音を、地下の奥で聞いたことはあるだろうか。駅の喧噪が引き潮みたいに引いたあと、残るのは無線の白いノイズと、湿った風だけだ。新人監視員として配属された夜、俺はその音に迎えられた。 工事区画は終電後にだけ開く。防塵シートの向こうで線路はむき出しになり、天井からは一定の間隔で水...
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0chat_bubble 029 views2週間前 - 入れ替えたチョコレート
数年前、友人の姉から聞いた話だ。 姉が結婚前に勤めていた職場に、政子さんという親友がいた。明るく美しく、誰からも好かれる人で、姉にとって特別な存在だったという。 ある年の二月、二人で義理チョコを買いにデパートへ行った。姉は恋人――今の夫――への本命と職場用を選び、政子さんも同じように籠を満...
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0chat_bubble 057 views3週間前 - 内側へ向く足跡
そのアパートには、昔から奇妙な決まりがあった。 夜中に廊下で足音を聞いても、絶対にドアを開けないこと。 管理人から直接そう言われたわけではない。ただ、入居者同士で自然と共有されている暗黙の了解だった。 理由は誰も詳しく語らない。 「開けた人が、すぐ引っ越した」とか、「部屋が空いたまま戻らなか...
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0chat_bubble 0112 views3週間前 - 名札のある階段
今でもあの夜の匂いを思い出すと、胸の奥がざわつく。 湿った布を干しっぱなしにした時のような、微かな酸味を帯びた匂いで、鼻の奥に残って離れない。あれを感じたのは、自分の部屋ではなかった。もっと古くて、もっと薄暗くて、もっと静かな場所だった。 その日の夕方、私は仕事を切り上げる頃にはひどい頭痛に...
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2chat_bubble 0498 views1ヶ月前