志那羽岩子
@37CFgE8bwimoue3M
幽霊より人間が怖いタイプです。
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町役場のロビーに、見慣れない装置が置かれた。 黒い筐体に、小さな画面がひとつ。 説明書きには、こうあった。 「未来の一言を表示します。 利用は一人につき一度限りです」 明日の自分が、必ず口にする言葉が映るらしい。 占いにも似た軽さで、人は集まり、笑いながら列を作った。 「今日は忙しいな...
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3chat_bubble 01.6k views2週間前 -
あの夏の記憶には、最初から欠落がある。 思い出せない部分があるのではない。 思い出してはいけない部分が、最初から折り畳まれている。 小学五年の夏、私は母方の祖父母のいる山間の集落で過ごしていた。五十人にも満たない人間が暮らす場所で、外から来た子供は私ひとりだった。すぐに、年上の少年二人と、年...
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0chat_bubble 023 views2週間前 -
C-3ブロック、夜間検疫担当の業務端末には、削除されていないローカルファイルが残されていた。 これは正規の業務日誌ではない。定年退職した前任の「モグラ」こと古参検査員が、後任の私に残したメモである。 この港では、AIの画像診断で「分類不能」と弾かれたコンテナのみを、人間が直接開けて確認する手...
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1chat_bubble 0651 views2週間前 -
五年前に、ダムの底で人が消えた。 事故報告書にはそう記されている。名前も役職も、原因も簡潔に処理され、現場は通常運転に戻った。私が引き継いだのは、計器の配置と巡回経路と、夜間監査廊の癖だけだった。 監査廊は、音が遅れて届く。 足音は一拍遅れ、換気ファンの低音は壁の内側で反響し、どこから鳴って...
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0chat_bubble 027 views2週間前 -
最初におかしいと思ったのは、消毒用アルコールの匂いだった。 私は市の資料保存室で働いている。公文書や古い帳簿を扱う部署で、閉架の書庫が主な職場だ。仕事の内容は単調で、紙の状態を確認し、劣化の程度をチェックし、必要なら簡単なメモを残す。それだけだ。 保存室では火気厳禁だから、清掃や作業前後に...
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3chat_bubble 01.5k views2週間前 -
伯父がひとりで守ってきた渡し場の詰所というのはね、 川べりのいちばん端っこにあるんですけど、不思議と人の気配が途切れない場所だったんですよ。 朝は通勤で船に乗る人がいて、昼は畑に渡る人がいる。 用もないのに腰を下ろして、湯呑をすすりながら川を見て、何となく話して帰る人もいる。 渡し舟っていう...
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1chat_bubble 029 views3週間前 -
あいつがそれを口にしたのは、笑い話にできる席じゃなかった。 年度末の監査が終わった日の昼休み、ビルの裏手の非常階段で、煙草も吸わずにただ手すりを握っていた。人に聞かせるというより、自分の中の順序を確かめるみたいに、言葉を一つずつ置いていく話し方だったと、同席していた職員が言っていた。 「時...
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0chat_bubble 024 views3週間前 -
雨の匂いが強い夜だった。 梅雨の終わりで、空気がぬるく重い。 私は寝る前にいつもの癖で、机の上の小さな置き時計を見た。針はちゃんと進んでいるのに、秒の音だけが少し遅れて聞こえた。 廊下の突き当たりにある非常口の扉が、半開きになっている。家ではない。住んでいる建物の共用廊下だ。けれど私は、その...
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0chat_bubble 029 views3週間前 -
入室したのは、昼の業務が一段落した時間帯でした。 建物は古いものの、用途は明確です。市が管理する資料保管施設で、役目を終えた帳簿や記録媒体が一時的に集められる場所でした。 私は外部委託の整理担当として、内容の価値ではなく保存方法の妥当性のみを確認する業務に就いていました。 情報に意味があるか...
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2chat_bubble 0482 views3週間前 -
これは、誰にも話していない出来事です。 文章にするのも正直ためらいましたが、書かずにいると、自分の中で何かがずっと引っかかったままになる気がして、ここに残します。 あの日、私は会社に一人で残っていました。 残業というより、片付けです。資料の確認やログの整理で、特別な作業ではありません。いつも...
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1chat_bubble 02.4k views3週間前