本当にあった怖い話

怖い話の投稿サイト。自由に投稿やコメントができます。

新着 長編
外さなかったもの
外さなかったもの
新着 長編

外さなかったもの

18時間前
怖い 1
怖くない 0
chat_bubble 0
120 views

搬入口のある複合ビルに着いたのは、昼のピークを過ぎた頃だった。地図アプリは正しいはずなのに、同じ形の棟が並び、外壁の番号は途中から飛んでいる。荷物を抱えたまま何度か角を曲がり、気づけば表の人通りが途切れ、裏側のサービス通路に入り込んでいた。

空調の音だけがやけに大きい。床は白く、天井は低い。途中で「関係者以外立入禁止」の札を見つけ、引き返そうとしたが、背後の扉は静かに閉まり、取っ手は空回りした。鍵の手応えも音もない。ただ開かない。

横の非常口が開き、年配の男が出てきた。制服でも作業着でもない。ただ首から太いストラップを下げている。

「迷ったか。ここは客用じゃない」

事情を話すと、男は廊下の奥の表示を一瞥した。

「戻すより早い。抜け道がある。ただし手順がある。嫌なら待て」

待つ、という言葉が妙に重かった。誰も来ない気配の場所で、いつ来るか分からない誰かを待つ。選択肢にはならなかった。

「抜けたいです」

男は細い通路を進み、狭い部屋に通した。ガラス越しに、無人の受付台と透明な箱が並んでいる。箱の中に薄いフェイスシールドが積まれていた。

「これを着けろ。外すな。理由は聞くな」

軽い。だが被った瞬間、視界の端がわずかに歪んだ。透明なのに、距離感が狂う。床が少し浮いて見える。

さらに奥の通路へ進む。音が吸われるように静かだ。靴底の感触だけが強い。耳の奥が詰まり、自分の呼吸が骨から響く。

角で男は立ち止まり、棚から細いリストバンドを手渡した。小さなランプが付いている。

「手首に巻け。ランプが点いたら扉が開く。入ったら座って待て。立つな。外すな」

言い終えると、男は振り返らずに去った。足音も、扉の開閉音も聞こえない。

取り残された。

リストバンドを締める。肌に当たる部分が冷たい。ランプは消えたままなのに、手首の内側だけがひやりとする。

時間の感覚が薄れた頃、遠くで圧が動いた。空気がわずかに押し引きする。次の瞬間、ランプが点いた。目の前の扉の縁が細く光る。音はない。

押すと、抵抗なく開いた。

中は小さな部屋。椅子が一脚。窓はない。照明は平坦で影を作らない。言われた通り座る。シールド越しの世界は輪郭だけが強調され、奥行きが消えている。

背後の扉が閉まる。音はしないのに、空気が一段落ちた。

足元に気配があった。

視界の歪みのせいで、斜め下にあるはずの輪郭が掴めない。私は反射的にシールドの縁に触れかけた。だが止めた。

1 / 3

後日談:

後日談はまだありません。

アバター 002_012

幽霊より人間が怖いタイプです。

投稿数 29
怖い評価 260
閲覧数 19k

この怖い話はどうでしたか?

f X LINE

chat_bubble コメント(0件)

コメントはまだありません。

0/500

利用規約をよく読んで、同意の上でコメントしてください。

・連続コメントは禁止しておりますが、新規登録・ログインすることで、連続コメントも可能となります。

お客様の端末情報

IP:::ffff:172.30.1.71

端末:Mozilla/5.0 AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko; compatible; ClaudeBot/1.0; +claudebot@anthropic.com)

※ 不適切な投稿の抑止・対応のために記録される場合があります。

label 話題のタグ

search

【参加型】投稿企画・タイアップ企画

  • 禍禍女
  • 心霊スポット
  • 意味怖

一息で読める短い怪談

読み込み中...

じっくり染み込む中編怪談

読み込み中...

深夜に読むと戻れなくなる長編怪談

読み込み中...
chat_bubble 0