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右肩にいる

17時間前
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三年前の冬のことです。

その頃は仕事が忙しく、毎日のように終電で帰っていました。

駅に着くのはだいたい夜一時過ぎです。

家までは徒歩十五分ほどで、住宅街をまっすぐ進むだけの道です。

大通りを外れると街灯も少なく、夜は物音ひとつしないほど静かになります。

途中に小さな公園があります。昼間は子どもたちが遊ぶ、ごく普通の公園です。

ブランコと滑り台と砂場があるだけの場所ですが、夜になると真っ暗で、正直あまり通りたくありません。

それでも近道になるので、いつも横を通っていました。

その日も、寒さに肩をすくめながら歩いていました。

公園の前を通りかかったとき、ブランコの軋む音が聞こえました。

きい、きい、と規則的な音でした。

風はほとんどなく、木の枝も動いていませんでした。

それなのに、ブランコだけが揺れているようでした。

暗くてはっきりとは見えませんでしたが、一つだけがゆっくり前後に動いているのが分かりました。

嫌な感じがして、足早に通り過ぎようとしました。

そのときです。

「ねえ……」

小さな声が背中のほうから聞こえました。女の子の声のように思えました。

聞き間違いだと思おうとしましたが、はっきりと耳に残りました。

振り返りませんでした。

振り返ってしまったら、何かが決まってしまう気がしたのです。

すると、すぐ近くでまた声がしました。

「ねえ、待って」

心臓が速く打ち始めました。

走ればいいのに、なぜか走れませんでした。前だけを見て、必死に歩き続けました。

公園を抜けたはずの場所で、また鎖の軋む音がしました。

きい、と。

すぐ後ろで聞こえました。

反射的に振り返りましたが、そこには誰もいませんでした。

公園はもう少し離れていて、この位置からは見えないはずです。

それなのに、音だけがすぐ背後にあったのです。

その瞬間、右肩が軽く後ろに引かれました。

強くではありません。触れた、という程度です。

でも、確実に何かがそこに触れました。

悲鳴も出ず、そのまま全力で家まで走りました。

玄関でようやく息を整え、コートを確認しました。

右肩だけが、手のひらほどの大きさでじっとりと濡れていました。雨は降っていませんでした。

地面も乾いていました。

それから半年ほど、公園の横は通りませんでした。

遠回りでも明るい道を選びました。

半年後、また同じ時間に帰ることがあり、もう大丈夫だろうと思って公園の横を通りました。

ブランコは揺れていませんでした。音もしませんでした。

ほっとした瞬間、ポケットの中のスマホが震えました。

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幽霊より人間が怖いタイプです。

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