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14時間前
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C-3ブロック、夜間検疫担当の業務端末には、削除されていないローカルファイルが残されていた。

これは正規の業務日誌ではない。定年退職した前任の「モグラ」こと古参検査員が、後任の私に残したメモである。

この港では、AIの画像診断で「分類不能」と弾かれたコンテナのみを、人間が直接開けて確認する手順になっている。通称「目視特例」。危険手当は破格だが、条件がある。防護服なしで中に入り、五感で安全性を判断すること。機械が迷う微妙なニュアンスを、人間の直感で白黒つけるためだ。

システム上、人間が「問題なし」とタグを打てば、どんなエラーが出ていてもコンテナは国内へ流通する。その責任を負うのが私たちの仕事だ。

最初のファイルには、南米発の冷凍コンテナについての記述があった。

積荷は食肉加工品。温度管理システムは正常。しかし、ハッチを開けた瞬間、熱帯の湿った風が吹き抜けたとある。

庫内温度はマイナス二十度のはずが、肌にまとわりつく空気は生暖かく、鉄壁には脂のような透明な粘液が付着していた。

手順通り、特殊清掃班(クリーナー)が呼ばれた。高圧洗浄と燻蒸が行われたが、成分分析では「該当物質なし」と出た。

その後、業者が二度入り、粘液は見えなくなった。

記録には「視覚的には除去完了」とだけ記され、出荷許可が出された。

二つ目のファイルは、中東からの石材コンテナだ。

ここでは「重力」がおかしかったらしい。

積み上げられた石材の隙間を歩くと、平衡感覚が狂う。床が斜めに傾いているように感じられ、常に何かに足首を掴まれているような抵抗感がある。

奥へ進むほど、背後のハッチが遠ざかる錯覚に襲われたと書かれている。

これも清掃班が入り、配置換えを行った。

作業後、平衡感覚の異常は消失したとされる。

だが、備考欄に奇妙な記述がある。

「検査後、平らな地面を歩いていても、常に下り坂を降りているような加速感が消えない」

三つ目が最後の記録だった。出所不明の「空(から)のコンテナ」。

中身は空っぽだ。それなのに、重量センサーが過積載の警告を出していた。

ここで前任者は、初めて「接触」した。

ハッチを開けると、暗闇の中に誰かが座っている。

ライトを当てても光が吸い込まれて姿は見えないが、息遣いだけが反響している。

踏み込むと、何かが足元をサササと横切る感触がある。

壁を叩くと、コンテナの外側から叩き返される音がする。

記録は事務的な羅列に変わる。

清掃班の投入、一回目。

二回目。

三回目。

四回目。

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幽霊より人間が怖いタイプです。

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