
私は、ゴンボスジだって言われてきました。
昔この村にあった、女ばかり生まれる家のことです。
畑に呪いをかける家。牛蒡を抜くと、先に目玉がついていて、抜いた人を睨むって。睨まれた人は、そのうち死ぬって。
ほんとかどうかは知りません。
でも、みんな本気みたいに言います。
うちは女しか生まれません。お母さんも、おばあちゃんも、そのまた上も。
だから私もそうなんだって、小さいころから何度も言われました。
私は普通の中学生です。
テストは平均くらいだし、部活もゆるい文化部です。特別なことなんて何もありません。
ただ、土の匂いは好きです。
雨のあとの、少し重たくてあたたかい匂い。
この前、クラスの男子が言いました。
「うち、家庭菜園で牛蒡育ててんだよ。今度持ってくるわ」って、ちょっと自慢みたいに笑っていました。
私は何も言いませんでした。
ただ、そのとき少しだけ、うるさいなと思いました。
その日の夜、雨が降りました。
窓を閉めているのに、土の匂いがしました。
次の日、その子は学校を休みました。熱が出たそうです。
次の日も来ませんでした。
三日目も。
みんな心配しています。
私は、たぶん、していません。
だって、怒っていないから。
牛蒡は、まっすぐ引き抜かないといけません。
途中で折れると、残りは土の中に残ります。残ったまま、腐りません。
目を合わせないと、だめなんです。
きのうの放課後、校庭の端の花壇が、誰かに掘り返されていました。
細長い穴が、いくつも。
先生は猫のせいだと言いました。
でも猫は、まっすぐには掘りません。
土の奥に残ったものは、ちゃんと見ていないといけません。
見ないでいると、向こうから見てきます。
私は、まだ誰にも怒っていません。
だから大丈夫です。
今、あなたは、どこまで引きましたか。
ちゃんと、最後まで抜きましたか。
後日談:
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