
「響く足音」というものがある。冬の夜、誰もいない大学の廊下を歩くと、後ろから響く足音がするのだ。誰もいないはずなのに、まるで誰かがついてきているような感覚だ。大学時代、友人たちと語り合った時、そんな話題が出たことがあった。
ある冬の夜、私は研究室で遅くまで残業をしていた。他の研究者たちはすでに帰っており、廊下は静まり返っていた。帰り支度をしながら、ふと後ろを振り返った。その瞬間、カツカツと靴音が響く。まるで誰かが私の後ろを歩いているようだった。
気にせずに歩き始めたが、足音はいつの間にか私のペースに合わせてきた。驚くべきことに、明かりの下で映る影は私のものだけだった。少し不安になり、スマートフォンを取り出し、カメラを後ろに向けてみた。そこには誰もいない。隠れる場所などないのに、足音は依然として続いていた。
足元が不安定になり、靴紐が解けかけているのを感じた。心の中で「行かないで、先に行って」と呟き、廊下の端に寄った。すると、足音は急に近づいてきて、私の横をすり抜けるように通り過ぎていった。誰もいないはずの廊下に、ただ音だけが残された。
その日は確かに疲れていたし、静けさが怖さを増幅させたのだろう。しかし、何か不気味な存在が、私たちの身近に潜んでいることを感じずにはいられなかった。あの時、もし私が転んでいたら、どうなっていたのだろうか。今でもその思いが頭から離れない。夜の廊下で響く足音の恐怖が、心の奥に刻み込まれている。これからも、あの音が再び聞こえないことを願うばかりだ。
恐怖を抱えたまま、私はその廊下を早足で駆け抜けた。振り返ることなく、ただ逃げるように。無音の足音が、私の背後で消えていくのを感じながら。
不気味な廊下での出来事は、ただの幻影だったのだろうか。それとも、何か別の存在が私を見ていたのだろうか。今も、その疑問は解決できずにいる。
いつか、またあの廊下を通ることがあれば、私はきっと恐れを抱くことになる。あの足音が、再び響くことがないようにと、願うばかりだ。
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