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お題 長編
白い息の女
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白い息の女

4週間前
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冬の終わり、夜の電車は妙に静かだった。

窓の外は真っ黒で、ガラスに映る車内だけが“もう一つの世界”みたいに揺れている。

僕は座席に座ってスマホを眺めていた。

そのとき、向かいの席に座った女に気づいた。

息をのむほど、きれいだった。

長いまつ毛、整いすぎた鼻筋、肌は光を吸うみたいに白い。化粧が濃いわけでもないのに、目だけが妙に強い。

なぜか、視線が合った。

普通なら、すぐ逸らす。

でもその女は、逸らさなかった。

まばたきの回数すら、こっちに合わせるみたいに少ない。

僕は落ち着かなくなって、次の駅で降りることにした。

目的地はまだ先だったけど、なんとなく、ここで降りないといけない気がした。

ドアが開く。

ホームの冷気が流れ込む。

僕が降りる、その瞬間。

女も、同じタイミングで立った。

階段を上がる足音が、背後からぴったりついてくる。

振り返ると、女は少し離れたところにいて、まっすぐ僕を見ていた。

逃げるほどじゃない。

でも“偶然”にしては、距離が不自然だった。

僕は駅前のコンビニに入った。

買うものはないけど、明るい場所なら落ち着くだろうと思った。

棚の前で適当にガムを手に取る。

ガラスに映る店内、背後に、女。

まるで最初からそこにいたみたいに、自然に立っている。

レジに向かうと、女も同じ列に並んだ。

僕の会計が終わる。

店員が「次のお客様」と言う。

女は財布を出さず、商品も置かず、ただ僕を見て微笑んだ。

その微笑みが、綺麗すぎて、怖かった。

外に出ると、冬の空気が刺さった。

僕は早足で駅前の大通りを歩いた。タクシーを拾おうと思ったが、この時間は流れてこない。

ふいに、背後から声がした。

「寒いですよね」

振り向くと、女はコートの襟元を押さえ、まるで普通の会話みたいに言った。

「電車、同じだったから。安心しちゃった」

安心、、?

僕は、喉が乾く音がした。

「……すみません、急いでるんで」

逃げるように歩き出した。

すると、女の足音も、同じ速さになった。

走れば走るほど、足音も速くなる。

止まれば止まるほど、足音も止まる。

まるで僕の影みたいに。

路地に入ったのは失敗だった。

大通りから一本入るだけで、人の気配が急に薄くなる。

僕はコンビニの明かりが見える場所まで戻ろうとした。

そのとき、女が初めて、距離を詰めてきた。

すぐ背後。

吐く息が、首筋に当たった。

冷たい。

冬の冷たさじゃなく、冷蔵庫を開けたときの、あの“保存された冷え”。

「ねえ」

女が囁く。

「あなた、見たでしょ。さっき、窓に映った“私”」

背筋が固まった。

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はじめまして、よろしくお願いします。

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