
数日前から、古びたアパートの階段に子供用の靴が一足だけ置かれていた。最初は、誰かが間違えて置いていったのだろうと思っていたが、靴はいつまで経ってもそのままだった。
徐々に、ただの靴ではないことに気付く。毎晩、靴は少しずつ上の段に移動しているのだ。下の階から始まり、今では俺の住んでいる階まで来ている。
その動き方には、ある種の意図が感じられた。仕事で帰宅が遅い日が多いが、いつも朝には靴の位置は変わっていた。深夜に誰かが動かしているのだろうか、気になって仕方がなかった。
ある晩、俺は決心して階段を見張ることにした。夜中の3時、静寂の中で、信じられない光景を目にした。靴を履いた子供の足が、階段を一段上がるのを見たのだ。その足は、まるで生きているかのように動き、すぐに消え去ってしまった。
驚愕した俺は、その晩は布団にくるまって震えながら過ごした。翌朝、友人が訪ねてきた。安心感から、昨晩の出来事を話したが、友人は笑い飛ばした。「もしその靴が気になるなら、捨てればいいじゃん」と、軽い口調で言った。
俺は、そんなことをしたら祟られるかもしれないと反論したが、友人は「じゃあ、靴を逆さにしておくよ」と言い残し、ゲームを始めてしまった。
翌朝、靴は確かに一段下に移動していた。安心した俺は、しばらくその状態を楽しんでいた。しかし、ある日、階段を下りると、隣に住む女性とすれ違った。彼女は靴を見つめ、逆さにして俺を一瞥した。
「お前だろ?」と、凍りつくような視線を向けられた。俺はその瞬間、全身が震え上がった。すぐにでも引っ越さなければならないと感じた。靴の恐怖が、俺の生活を侵食していたのだ。彼女の目が、まるで呪いをかけるかのように、俺を捉えていた。恐怖に駆られ、俺は新しい場所を探し始めた。もう、あの靴と女の影から逃げ出すしかなかった。
彼女が何を知っていたのか、あの靴が何を意味していたのか、考えるだけで震えが止まらなかった。
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