
祖母が子供の頃、ある冬の夕暮れ、友人たちと帰る途中に普段通らない古びた遊園地の裏道に足を踏み入れました。薄暗い遊園地の奥から、楽しげな笑い声や音楽が聞こえてきました。
何か特別なイベントが行われているに違いないと、好奇心に駆られた祖母は、友人たちに内緒でその声の方へと進みました。小さなテントが立てられ、そこには異様な光景が広がっていました。奇妙な衣装を着た人々が、巧みな芸を披露していたのです。
中でも目を引いたのは、胸に大きな目が描かれた女性。彼女は、まるで生きた人形のように動きながら、観客を魅了していました。祖母は、その美しさに釘付けになり、思わず拍手を送りました。
すると、その瞬間、周りの芸人たちが一斉にこちらを振り向きました。彼女の目が祖母に向けられ、にっこりと微笑みます。祖母は一瞬、何か不吉なものを感じました。
「なんだか怖い…」
その直後、胸の目がぐるりと回り、目が祖母をじっと見つめ返してきたのです。彼女の笑顔は次第に凍りつき、恐怖が祖母の心を襲いました。
「助けて!」
叫びながら逃げ出す祖母の背後では、芸人たちの笑い声が響き渡ります。彼女は必死に家へ戻りましたが、その夜、眠れぬまま夢の中でも彼女の目が繰り返し現れるのです。
翌日、再び遊園地に戻ろうとしたが、そこにはテントの跡形もなく、ただ一つの古びた看板が風に揺れていました。友人たちは「何かに化かされたんじゃないか」と笑いながら言いますが、祖母は心の奥でその恐怖を決して忘れませんでした。彼女の心に残ったのは、ただその不気味な微笑みだけでした。彼女はその出来事を他人に語ることは二度となかったのです。彼女の中には、いつまでも消えない恐怖が宿り続けました。
「これが、裏道の恐ろしい話だ。」と、祖母は私に語るのでした。彼女の目が一瞬曇ったのは、あの目が今もどこかに存在しているかのように感じたからかもしれません。
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