
数ヶ月前、山奥の村に引っ越した。
新しい職場のための通勤路には、毎晩不気味な人形が立っていた。その人形は古びた木製で、目は釘で無造作に打たれていた。日中はただの置物に見えるが、夜になると村の街灯の明かりが当たり、まるで生きているかのように見えた。誰もその人形の由来を知らず、ただの村の奇妙な文化の一部だと思っていた。
ある晩、仕事のストレスから解放されるために飲みに行くつもりだったが、気分が乗らず、帰り道に人形を見かけた。全くの無表情でこちらを見つめ返すその目が、なんだか不快で仕方なかった。ついカッとなり、人形を掴み上げ、近くの川に放り投げた。
「バシャーン!」と音を立てて川に落ちた人形。水しぶきが上がり、周囲が一瞬静まり返った。
不安に駆られながらも、近づいてみると人形の中から古い紙が出てきた。それはまるで風化した手紙のようで、二つの年月日が書かれていた。上には自分の誕生日、下にはその日の日付が記されていた。
恐怖が全身を駆け巡り、周囲を見回す。誰もいない。ただ静寂が広がる。
急いでその場を離れ、家に帰った。頭の中は混乱していた。誕生日は偶然だったのかもしれない。しかし、今日の日付が書かれていたことはどう考えても不気味だった。何かの予言なのか?
翌日、村に戻っても人形はそのまま放置されていた。日々が経つにつれ、その出来事は少しずつ記憶の彼方へ消えていったが、あの人形が何を意味していたのかは今でも謎のままだ。近所の住人たちに尋ねても、誰もその人形について何も知らなかった。奇怪な思い出として心の中に残り続けている。
今では、あの人形が何かの象徴だったのか、ただの偶然だったのか、未だに分からないままでいる。恐怖と不安が交錯する冬の夜、あの村の記憶が忘れられない。
人形の正体は、もしかしたら今もどこかに存在しているのかもしれない。
恐ろしいのは、あの人形が何を見ていたのか、それを知る者が誰もいないことだ。
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