
これは、友人の家へ送る途中の話だ。
彼が住んでいた場所は、辺りに人が住んでいないような山道で、コンビニも遠くにあるようなところであった。
その日は秋の深夜、霧が立ち込めていた。
彼は友人を車に乗せ、真っ暗な道を走っていた。
その道には、街灯もなく、まるで別の世界に迷い込んだようだった。
周囲には車も人も動物も見当たらず、ただ彼らだけが闇の中を進んでいた。
走行中、彼の目にふと人影が映った。
それは、霧の中に佇む若い女性だった。
彼女は白いドレスを着ており、髪は風に揺れていた。
その様子はまるで、夢の中の存在のように思えたという。
彼はその影を通り過ぎ、振り返った瞬間、彼女の顔が目に入った。
その顔は、まるで光を失ったように無表情で、白く、どこか不気味だった。
友人は恐怖を感じたが、彼は「ただの人だろう」と思い、進むことにした。
友人は「戻ろう」と言ったが、彼は「大丈夫だ」と返した。
しばらく進むと、道の脇に一台の車が止まっているのが見えた。
彼は、「恋人同士が喧嘩でもしたのだろう」と話していた。
そのまま友人を自宅まで送り届け、彼も帰路についた。
翌日、新聞に目を通していると、山の近くで若い女性の遺体が発見されたという記事が目に飛び込んできた。
その写真には、あの夜見た女性の顔が映っていた。
彼は、あの時戻っていれば助けられたのかもしれないと思ったが、友人は「彼女は生きているようには見えなかった」と言った。
今となっては、真相はわからないままである。
彼が住んでいる場所は、今でも静かな山道のままだ。
その道を通るたび、彼はあの霧の中の影を思い出し、何かが自分を見つめている気配を感じるのだった。
不気味な霧が再び立ち込める夜、彼はその影を再び見ることになるのだろうか。
彼はただ、恐れを抱えて生きていくのだった。
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