
冬の真夜中、私は古びた団地の一室で一人暮らしをしていた。外は静まり返り、周囲の住宅も眠りについている様子だった。私の住む部屋は2階に位置しており、ベランダはなく、窓の下はただの歩道。普段は人の声が聞こえることも多いが、深夜になるとその静けさが一層際立つ。
ある晩、夢の中で「もうすぐ来るから」と繰り返す不気味な声に悩まされ、ふと目が覚めた。時計を見ると、時刻は1時を過ぎていた。普段は眠りが深い私だが、なぜか目が覚めたのだ。
耳を澄ますと、窓の外から足音が聞こえてきた。薄暗い歩道を歩く人の音だ。冬の夜は特に静かで、その足音は不気味に響いた。私は恐怖を感じながらも、心の中で「ただの夢だ」と自分を慰めようとした。
その瞬間、今まさに団地の前を通り過ぎる足音の主が口を開いた。「夢じゃないかもよ〜」その言葉は、どこか楽しげでありながら、冷たい風のように私の背筋を凍らせた。声の主は見えないまま、足音は徐々に遠のいていった。
その後、特に何も起こらなかったが、あの声だけは今でも忘れられない。壊れた時計が時を刻む音も、どこか不吉に感じるようになってしまった。深夜の囁きは、私の心に棘のように残り続けている。
あの声は、夢の中の存在なのか、それとも現実のものだったのか。今も、考え続けている。
時々、あの団地を訪れたくなるが、心のどこかであの声を再び聞くのが怖くて、足がすくんでしまうのだ。
深夜の静寂の中で、再びあの声が聞こえたらどうしよう。夢では済まされない現実が、そこには待っているのかもしれない。
それでも、私は恐怖を感じながらも、またあの団地に戻ることになるのだろう。あの囁きが、私を呼んでいるから。
何かが、もうすぐ来るから。
そう、夢じゃないかもよ。
その言葉が、今も耳に残っている。
何度でも、思い出してしまうのだ。
あの時の、あの声を。
そして、再び、あの場所へ。
後日談:
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