
短編
俺じゃない
アラジン 2018年3月22日
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実家があった地元では、毎年必ず3月に近くの山の山頂付近でお祭りをやった。子供は設けられた祭壇の前で歌うと、祭壇に飾ってあったお菓子を貰えた。それが終わると大人が飲んで騒ぐだけなので、大きい子は小さい子を家に送り届けるのが恒例だった。
ある年、近所のA君が山を下りている途中でトイレに行きたいと言い出した。
寒さでお腹が冷えたようだった。トイレは山頂付近か山の下の駐車場にしかなく、A君の限界を考えると山頂付近まで戻らなくてはいけなかった。他の子はさっさと帰ってしまい、日中とは言え小さい子だけではかわいそうなので一緒に行ってあげた。その年は運よく掃除されていて、問題なく使えた。
A君につられて自分も用を済ませていると、A君が先に外に出る音が聞こえた。用が済んで手を洗っていると、A君が「パパが面白いもの見つけたんだって!」と興奮した様子で言ってきた。確かに、外の方からA君の父親の呼ぶ声がした。
でも、外に出る前に後ろの個室がいきなり開いて、A君の父親に引きずり込まれた。
「あれは俺じゃない!!」
しばらくして、呼ぶ声が聞こえなくなって、戻ってこないことを心配した他の大人が捜しに来た。事情を話すと、車で家まで送ってもらえた。ところが、数日後、やっぱりA君は行方不明になってしまった。平日で父親が仕事だったにも関わらず、父親と山に遊びに行くと言って出ていったきり戻らなかったらしい・・・。
この怖い話はどうでしたか?