
長編
山姥
匿名 3日前
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【山姥】
俺の住む村には、山姥《やまんば》がいる。
とはいえ、実際に目にしたことがあるわけではないので、“いるらしい”と言った方が正しいのかもしれない。“それ”がいつからこの村に棲み着いているのか、それを知る者は誰一人として存在しない。
けれど、遥か昔から間違いなくこの村には山姥がいるのだそうだ──。
それまで俺はただ漠然と、立ち入りが禁止されている場所があることだけは知っていた。幼い頃から、決して入ってはならないと聞かされていたその山。俺はそんな山にさほど興味なんてものはなかったし、その理由に関しても全く興味がなかった。
周りの子供達が元気に走り回って遊んでいる中、本の虫だった俺は、家の中で一人でいることの方が多かったせいもあるのかもしれない。
そんな俺が初めてその山に興味を持ったのは、まだ小学五年生の頃だった。
趣味も性格もてんでバラバラだというのに、いつも気付けば自然と一緒にいることの多かった四人組。そんないつもと変わらない顔ぶれとの下校中、ピタリと足を止めたK君は前方に見える山を指差した。
「なぁなぁ、あの山に山姥がおるってじいちゃんから聞いたんだけど。知っとった?」
唐突にK君がそう切り出したのは、通い慣れた畦道《あぜみち》を半分程進んだ時だった。
「ヤマンバって、何?」
「よう知らんけど……たぶん、鬼みたいなやつ。山に迷い込んだ人間を食べてまうんだって」
「えっ……。あの山に、鬼がおるが?」
「うん」
「そんなの嘘やちゃ。鬼なんて実在せんし」
「けど、じいちゃんがおるって言うとったし」
「じゃあ、今から見に行ってみんまいけ」
そう皆が口々に盛り上がっている横で、俺は前方に見える山を静かに見つめていた。
幼い頃から、決して入ってはならないと大人達に言われているあの山。“何か恐ろしいことが起こる”とだけ聞かされていたその理由は、どうやらその山姥が関係しているらしい。そう考えると、これまで一切関心のなかったあの山にも、少しだけ興味が湧いてくる。
「たけちゃんも、一緒に行くやろ?」
そんな俺の様子に気付いたのか、K君はそう告げるとニッコリと微笑んだ。
「行きたいけど、留守番せんにゃいけんがや。今日ちゃ親がおらんさかい、妹の面倒見んにゃいけんで」
「じゃあさ、妹も連れて来りゃいいんでない?」
「まだ五歳やさかい、山登りはできんや
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- 主人公の息子だったんですねあー
- ではでは、解説しますね 最初、主人公の少年達は4人組だった。その内3人で山に行くも、翌日帰って来たのは2人だけだった。余っていた机や、誰か居たような気がしたのはこの4人目の少年。彼は山姥に食べられ、何故かその存在の記憶すら抹消されてしまった為、多少の違和感はあるものの誰も気付かない。 その後、大人になった主人公。 ゲーム機や子供用の食器類は、主人公の子供のもの。でも、記憶がないということは…山姥に…。 やはりここでも、違和感は感じるものの主人公は気付けない。だけど、本能的に察しているのか悲しみから涙が出ている。 って感じですBAgu
- すみませんが、僕には意味がわかりませんでした。あー