
秋の夜、友人たちと共に山奥の古い宿に泊まることになった。宿は、友人の親戚が経営しているもので、雰囲気はどこか不気味だった。
到着後、私たちは夕食を囲みながら楽しく過ごしたが、次第に宿の暗い廊下や古びた家具が気になり始めた。ふと、トイレに行くために廊下を歩いていると、どこからかささやくような声が聞こえてきた。最初は気のせいかと思ったが、声は次第にはっきりと私の名前を呼ぶ。振り返っても誰もいない。
気味が悪くなり、トイレを済ませて急いで部屋に戻ると、友人たちが笑いながら私を待っていた。私の不安を話すと、彼らは冗談混じりにからかってきた。だが、私は本気で怖かった。何かがいる、何かがこの宿にはいる。
その夜、布団に入ってもなかなか眠れず、ふと目を開けると、部屋の隅に古い人形が座っているのに気がついた。友人たちが寝静まった静寂の中、その人形がまるで私を見ているかのように感じた。怖くなり、布団を被って目を閉じた。
翌朝、友人たちと朝食を取っていると、宿の主人がやってきて、昨晩の奇妙な話を始めた。近くの村では、数年前に行方不明になった少女の話が有名で、彼女の人形が宿のどこかにあるという。宿の主人はその人形を大切に保管しているが、時折奇妙なことが起こると言った。
その瞬間、友人の一人が宿の中に人形を見つけたと興奮して叫んだ。私たちはその人形を見に行くことにした。部屋の奥にある小さな物置から、埃をかぶった人形を見つけた瞬間、私はその顔に見覚えがあった。数年前、近所の子供が持っていた人形だったのだ。
驚いていると、その時、友人が後ろで何かに気づいた。振り返ると、廊下の暗がりから何かがこちらを見ている。私たちは恐怖で動けず、ただその場に立ち尽くした。すると、その影が近づいてきて、私たちの耳元で「返して」とささやいた。
全員が叫び声をあげ、逃げ出した。宿を飛び出し、山道を必死に走った。振り返ると、あの人形が廊下に立っているのが見えた。その瞬間、全ての恐怖が一気に押し寄せ、私たちは無我夢中で逃げ続けた。
後日、友人たちと再会した時、宿での出来事を語り合ったが、誰もがその人形のことを口にしなかった。私たちの間には暗い影が残り、あの少女のことも、あの人形のことも、恐れから目を背けるようにしていた。あの宿に何があったのか、あの少女が何を求めていたのか、私たちには分からなかった。ただ、その場所には二度と戻りたくないという思いだけが残った。
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