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お題 長編
私の私
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私の私

1ヶ月前
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放課後の教室は、窓の外の部活の声だけが遠くて、黒板のチョーク粉が光って見えた。

「ねえ、今日も残る?」

振り向くと、菅野(かんの)紗良が立っていた。二年の春から同じクラスになって、最初に話しかけてきたのも彼女だ。やたらと距離が近くて、笑うときだけ目が笑わない。けれど、そういう子はクラスに一人くらいいる。

「用事あるから」

「そっか。じゃあ、帰り道だけ」

断りきれなくて、並んで昇降口を出た。彼女は私の歩幅にぴたりと合わせる。靴紐がほどけたときには、しゃがみこんで結び直してくれた。まるで私の体の一部みたいに。

その日から、紗良は私の「外側」に住みついた。

ロッカーを開けると、いつもペンケースがきれいに揃っている。机の中のプリントが日付順に並ぶ。休んだ日は、誰に頼んだ覚えもないノートの写しが置かれている。紙の端に、丸い字で一言。

――好き。

最初は冗談だと思った。女子同士でも、そういうノリはある。そう信じたかった。

でも、紗良はノリではなかった。

昼休み、私が別の友だちと笑っていると、紗良は少し離れた席で弁当を閉じ、箸を揃えて置いた。そのまま、私たちの笑い声の「間」に目を向けている。まるで、そこに自分が入り込める隙間を探すみたいに。

ある日、私のスマホに知らない番号からメッセージが届いた。

ねえ、今日の三時間目

先生の話、つまらなかったね

右から二番目の窓、少し曇ってた

ぞっとした。三時間目、私は窓の曇りを指で拭って、丸を書いたのを覚えている。周りに気づかれないように、小さく。

振り返ると、紗良はノートを取っていた。前髪の隙間からこちらを見て、にっこりした。笑顔なのに、皮膚の下が冷たい。

その日の放課後、思い切って言った。

「私、そういうの、やめてほしい」

紗良は首を傾げた。まばたきが遅い。

「どれのこと?」

「……見てたでしょ。私のこと」

「見るよ。好きだもん」

言い方が、雨の日の体育館みたいに反響した。軽いはずの言葉が、重く戻ってくる。

「好き、って、そういう意味じゃなくて」

「じゃあ、どういう意味?」

彼女は私の机の縁を指でなぞった。爪の先が木目を撫でる音が、やけに大きい。

「私、あなたの“好き”になりたいの。あなたが好きなもの、好きな景色、好きな匂い。全部、私の中に入れたら、あなたと同じになるでしょ?」

「同じにならなくていいよ。私は私で……」

「ううん」

紗良は笑った。

「あなたは、“一人”でいようとするから、寂しくなるの」

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はじめまして、よろしくお願いします。

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