
俺が彼女の異常に気づいたのは、沙月と付き合ってちょうど一ヶ月が経った冬の寒い夜だった。
その日は温泉宿に行く前に、近くのコンビニで軽い食事を取った後、沙月の運転する車に乗り込んでいた。彼女は普段は明るいんだけど、今日はどこか元気がないように見えた。聞けば、最近見た夢のことを気にしていると言う。
その夢の内容は、彼女の家族が何かに襲われるというものらしい。俺は笑い飛ばしたが、沙月は真剣な表情で続けた。「家族の写真が夢に出てきたの。何かおかしいと思った。」
宿に着くと、古びた温泉宿が目に入った。霧が立ち込め、薄暗い館内はどこか不気味だった。沙月は興奮した様子で宿を案内してくれる。だが、俺はその瞬間、彼女の後ろで何か動く影を見た気がした。
部屋に入ると、彼女は壁に掛かっている古い写真を見つける。そこには、彼女の祖母らしき女性が写っていたが、目がどこか虚ろで、まるで生きているかのように俺を見ているようだった。サウンドトラックのように流れる静けさの中、俺は不安を感じた。
食事を済ませ、温泉に浸かる頃、沙月が急に「お風呂から出たら、私の家族のことを話そう」と言った。彼女が真剣な顔をしているのが気になり、俺は少し戸惑った。
しばらくして、宿の部屋に戻ると、彼女はリビングの片隅で何かを掘り返している。何か大きな物があるようで、俺は気になって近づいた。彼女は「見つけた!」と叫び、古いアルバムを取り出して見せてくれた。ページをめくると、そこには彼女の家族の笑顔が広がっていた。
しかし、次のページを開いた瞬間、俺は凍りついた。そこには、彼女の家族が全員、恐ろしい表情で俺を見つめていた。全身に寒気が走り、背後に誰かの視線を感じた。振り返ると、先ほどの影が、今度ははっきりとした形で現れた。
それは、彼女の祖母だった。顔に焼き付いた笑みは、まるで俺を誘うようだった。沙月はその瞬間、俺に向かって言った。「大丈夫、彼らは私を守ってくれる。」
その言葉に、俺は恐怖が押し寄せてきた。「何を守ってくれるんだ?」と問いかけると、沙月は笑顔のまま、「私の秘密を知ったから、あなたはもう逃げられない。」
その瞬間、影が俺の周りを取り囲み、何か声が聞こえた。「あなたは裏切らないよね?」
俺は叫び声を上げるが、声は宿の静寂に消えていった。何が起こったのか分からず、ただ彼女の手を引っ張って逃げようとする。しかし、沙月は俺を引き留め、「もう戻れないよ」と言い放った。
後日談:
後日談はまだありません。
この怖い話はどうでしたか?
chat_bubble コメント(0件)
コメントはまだありません。


