
父が友人と共に飲んでいたある冬の夜、彼は昔の不気味な出来事について語り始めた。数年前、当時住んでいた高層ビルで火災が発生した時の話だ。
その時、父は自宅の22階にいて、窓から火事を眺めていた。サイレンの音が響く中、彼の目に飛び込んできたのは、ビルの屋上に立つ一人の男だった。男は真っ黒なコートを着ており、顔は真っ白で無表情だった。火事の混乱の中、なぜかその男だけは異様に静かで、まるで他の人々を嘲笑うかのように不気味に笑っているように見えた。
父は友人にそのことを話すと、友人も何か感じ取ったようで「見えたのか?」と問いかけた。父はその男がいるはずのない場所に立っていたことを思い出し、背筋が寒くなった。その男の目は火事の炎を見つめながら、まるで楽しんでいるかのようだった。
結局、消防士たちはその男に気付くことなく、火事は消し止められた。しかし、父はその男の存在が放火犯なのか、あるいはこの世のものではない何かだったのか、今でも分からないままだと語った。友人は静かに頷き、二人はその話の恐ろしさをしみじみと噛み締めるのだった。火災が収束する頃、二人の心には、あの男の笑顔が深く刻まれたままだった。恐怖は時を経ても消えることはない。母親に語り継がれるのは、この不気味な記憶なのかもしれない。
その後、父はビルを引っ越したが、あの不気味な男の影が時折夢に現れると言っていた。彼にとって、それは忘れられない、そして恐怖を伴う記憶だった。
それ以来、火災のニュースを耳にするたび、父はあの男の不気味な笑顔を思い出さずにはいられないのだ。何か悪しきものが火事の背後に潜んでいるのかもしれないという思いが、彼の心に重くのしかかっていた。火事の恐怖は、単なる炎ではなく、その背後に潜む悪意の象徴でもあったのだ。
そして今、彼は言う。「あの男は一体何者だったのか、今でも解明されないままだ。」
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