
冬の昼下がり、私は偶然手に入れた古いカメラを持って森を散策していた。新雪が積もった静かな森は、まるで別世界のようで、心が洗われる思いだった。
周囲は静まり返り、他の人間の気配は感じられない。そんな中、少し不安を感じながらも、カメラのシャッターを切る音を響かせていた。ふと、以前訪れたときは賑やかだったことを思い出し、少し不思議に思った。
約30分ほど歩いた頃、前方から人の声が聞こえた。おそらく60代くらいの夫婦と、その孫と思われる小学生の男の子が楽しそうに話しながらこちらに向かってくる。森の中なのに、なんとも楽しげな雰囲気だった。
「こんにちは!」と元気に声をかけると、夫婦は「こんにちは!」と返してくれた。しかし、男の子は私を見つめることなく、ただ無表情で通り過ぎていった。
不思議に思いながらも、また歩き出した。しばらくして、再び同じ家族に出会った。今度は彼らが私の前を通過する際、夫婦は「また会ったね」と言い、男の子はただ無言でいた。こんなことはありえないと思いつつも、何かの間違いだろうと気にしないようにした。
しかし、さらに10分ほど進むと、また彼らが道の真ん中に立っているのが見えた。今度は顔が異様に変わっており、目も鼻も口もない、ただの白い顔だった。夫婦は同じように「こんにちは、こんにちは」と繰り返し、男の子は無言のまま私を見つめ続けていた。
恐怖が押し寄せ、逃げ出したい衝動に駆られたが、他に進む道はない。私は思わず目を閉じ、無言で彼らの間を通り抜ける。背筋に冷たいものを感じながら、振り返ると彼らは私を見ずに前を向いて立ち尽くしていた。
その後、無事に森の出口まで辿り着いたが、心臓はバクバクしていた。出口にいた管理人が私の様子を見て、心配そうに声をかけてきた。「大丈夫ですか?何か変なことがあったんですか?」
私は息を整えながら、その家族のことを話した。「もしかして、あの家族も同じような人ですか?」と尋ねると、管理人は苦笑いを浮かべた。「ああ、それは昔からいる感じです。あの森には、時折、迷ってしまった人々の霊が現れることがあるんです。」
彼は続けて言った。「でも、心配しないでください。彼らに危害を加えることはありません。ただの悪戯です。見かけたら、無視するのが一番ですよ。」
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