
私たちは地方の山村に引っ越すことになった。冬になると、ここでは雪が深く積もり、特に山の方では3メートルに達することもある。雪が降ると、除雪作業が日常の一部となり、そこで命を失う人々がいることを知らされた。
雪崩や落雪に巻き込まれるよりも、屋根から落ちてしまう事故が多いのだ。亡くなった方々の多くは、地面に叩きつけられるが、中には雪の中に埋もれ、窒息してしまう人もいる。私の住む村でも、数十年前に屋根から落ちて亡くなった男性の話を耳にした。その声は冬になると、まだどこかで響いていると伝えられている。
その声は、辛そうに「うぅ、うぅ」と低く響く。真冬の夕方、家族が引っ越しの準備をしている時、私はその声を初めて聞いた。恐怖に包まれたが、引っ越しを終えたら笑い話になると思っていた。
引っ越しの最後に、家族全員で玄関前に立ち、記念写真を撮ることにした。そうして、シャッターを切ったその瞬間、何かが背後で動いた気配がした。後日、写真を確認すると、雪山に逆さになって刺さっている男性の姿が写り込んでいた。背筋が凍る思いがした。
その写真は、恐怖を抑えるために、近くのお寺で供養してもらった。私たちが新しい生活を始めたその場所でも、彼の声はどこかで続いているのだろうか。今でも、冬の夕方にはその低い声が耳に残る。私の心の奥底で、決して忘れることのできない冬の思い出として。
でも、家族の中でその声を聞いたのは私だけだった。誰も信じてくれない。私が一人で抱えるこの恐怖が、また冬が来るたびに蘇るのだ。彼はまだ、私たちの周りにいるのだろうか。彼の声は、いつか私を呼び寄せるのだろうか。
冬が深まってゆく中、私はただ無言で、その声に耳を傾けるしかなかった。
そして、また一つ新たな冬が訪れようとしている。何かが、私を待っているかのように。
その時、私はどうすることもできないのだ。
ただ、彼の声が響くたびに、心がざわめくのを感じるだけだ。
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