
従妹が転職したと聞いたのは冬の始まりだった。彼女は特に私たち姉妹に優しくしてくれる存在だったので、突然のことで驚いた。新しい職場が忙しいらしく、体調を崩しているという話を聞かされ、心配になった。
次の日、仕事を休んで、彼女が入院している病院へ向かうことにした。出発する前に、彼女の好きな苺タルトを買って行こうと思い、近くのパティスリーに立ち寄った。
病院へ着くと、迷路のような廊下を数人の看護師に道を聞きながら進んでいく。ようやく彼女の病室を見つけたが、ドアを開けた瞬間、思わず息を呑んだ。彼女は以前の面影がなく、顔色も悪く、やせ細っていた。
「苺タルト、持ってきたよ!」と声をかけると、彼女はわずかに目を細め、微笑んでくれたが、そのまま再び眠りについた。話すこともできず、私はその日は病院に泊まることにした。
翌日、病室に戻ると、彼女はまだ寝ていた。しかし、昨日置いて帰った苺タルトが一つ減っていることに気づいた。すると看護師が入ってきて、「今朝は食事を取らなかったのですが、このタルトを嬉しそうに食べていました」と言った。何だかホッとして、彼女のために何かできたような気持ちになった。
その日の夜、私は家に帰り、彼女のことを思い出しながら過ごしていた。すると、突然の連絡が入った。彼女が息を引き取ったというのだ。急なことで悲しみに浸る暇もなく、私たちは葬儀の準備に追われた。
火葬の際、母が苺タルトの一つを棺に入れてくれた。火葬が終わり、担当者が私たちに向かって、「棺の中のタルトが、焼けていないことに気付きました」と言った。何のことかわからず、顔を見合わせたが、棺の中には個包装のままのタルトが残っている。
それを見た一族全員が、「彼女は今、あちらでタルトを食べているんだね」と笑い合った。こんな奇妙な体験があるなんて、私たちはただ驚くばかりだった。彼女の最後の贈り物は、まるで私たちを見守っているように感じた。
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