
「あたし、古書が好きなんだ」って大学の時、気になっていた女の子が言っていて、「じゃあ、古本屋に行ったら喜ぶんじゃない?」なんて返したせいで、少し機嫌を損ねたことがあったけど、二十歳の冬、俺は本当に不思議な女に出会った。
確か、12月の初め頃だったかな。寒さが厳しく、あまり読む本も思いつかない時期で、好きな小説を探すために、いつも行く図書館に出かけたんだ。しかし、その日の図書館には、俺の読みたかった本は置いてなかった。
がっかりしながら視線を移すと、窓の外に女が立っていた。特に目立つ特徴はなく、普通の服装で、ただ真剣な顔でこっちを見ていた。俺と目が合った瞬間、何か言いたげに見えたけど、そのまま無視した。変に声をかけて、怪しまれたくはなかったから。
次の日、図書館の帰りに外に出ると、また彼女が立っていた。さすがに驚いた。まだそこにいるのかと思いつつ、彼女の姿を見た瞬間、思わず息を呑んだ。彼女は、雪に濡れていたからだ。
まさに頭からつま先まで、雪でびしょびしょだ。なんでこんなに濡れているのか不思議に思ったが、どうやらいつの間にか降り出した雪のせいだった。まさか傘を持たずに、ずっと待っていたのか?
その時、女が俺に目を向けて、静かに話しかけてきた。「古書って面白いですよね」と。何を言っているのか混乱する俺に、「私も好きなんです」と続けた。
「そうなんですか?」と返事をしたが、彼女がそんなに詳しいとは思えなかった。彼女は「最近、特に好きな本があるんです」と、少し微笑んで言った。笑顔が意外と可愛いなと思ったが、俺は少し緊張していた。
それから、彼女と話し始めた。どうやら本当に古書が好きなようで、彼女は俺の知らない作品を次々と挙げて、その内容を語り始めた。俺はその話に巻き込まれ、時間を忘れてしまった。気がつけば、一時間以上も経っていた。これ以上は良くないと思い、彼女に別れを告げた。彼女は「また会いましょう」と言ったが、何となくもう会えない気がしていた。
しかし、その予想は一週間後に裏切られた。夜中、図書館に行くと、また彼女が立っていた。やっぱり、窓の外で俺をじっと見つめていた。俺は軽く会釈をしたが、彼女は微動だにしなかった。何か忘れられているのかと思ったが、また彼女は話しかけてきた。「最近の本、どう思いました?」
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