
長編
団地
匿名 2016年10月27日
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前回は父方のじいちゃん家の話だったが、母方のじいちゃん家もかなりやばい所だった。
母方のじいちゃんは、元は結構いい家の長男として生まれ、後継ぎになるはずだったんだけど、じいちゃんの母ちゃんが精神を病んでしまい離婚してしまったので、後妻の長男が継ぐ事になったんだ。
で、じいちゃんはばあちゃんと結婚を機にとある団地に引っ越した。
そこがお話の舞台
その団地がある場所の地名は●塚。
その名の通り、近くには古墳が点在する山があり、その山を削って建てられた団地だ。
それのせいかどうかはわからないが、団地は常に陰鬱な雰囲気に満ちており、電灯も常にチカチカと点滅していて不気味だった。
バカでかい蚊トンボ(ガガンボの事)とか蛾がたくさんいて気持ち悪かった。
この団地がいつから建っているのかはわからないが、母ちゃんが生まれる前から住んでいるので俺が預けられている頃には少なくとも30年位経過している事になる。
ある時俺と弟はじいちゃんの家に預けられた。
団地の横にある公園で遊んでいたら、後ろから急に声を掛けられた。
「アン●ンマン!アン●ンマン!ウヒヒヒヒ」
なんなんだ…?と後ろを振り返ると、髭が伸び放題の、ずっと洗濯してなさそうなボロっちいはんてんを着た50代位のおっさんが立っていた。
髪はフケだらけでボサボサ、視点が合ってなくて飛び出そうなくらいギョロギョロとした目、長く汚れた爪、毛深くて骨ばった身体つき。
地獄の本で見た、餓鬼の様な姿だ。
「ウヒヒィ!アン●ンマン!アン●ンマン!」
そんなおっさんが半笑いでアン●ンマンと連呼しながらフラフラとこちらに近付いてくる。
「うわあああああ!!!!(ヤバい!喰われる!!)」
俺と弟は急いでじいちゃん家に逃げ込んだ。
あまりにも怖かったので、ばあちゃんに今あった事を話すと
ばあちゃん「ああ、あの人ね。隣の棟の人よ。あんまり関わったらあかんよ」
と言っていた。ばあちゃんはそれ以上の事は教えてくれなかった。
それからじいちゃん家に行くとちょこちょこおっさんを見かけて、その度に関わらないようにしていたのだが、ある時ぱったり姿を現さなくなった。
そこから数週間くらい経ったかな、ばあちゃんが同じ団地のおばちゃんと立ち話してた時に聞いてしまった。
おっさんが部屋で死んでたらしい。しかもおっさんには身寄りがなかった為誰にも気付かれず、発見された時にはそれはもう悲惨な状態だったようだ…異臭が漂い始めてやっと気付いたとか。
部屋の中はゴミが散乱しまくりの荒れ放題で、テレビも付けっぱなしだったそうだ。
死因とかは聞いてないからわからないけど、殺人とかではなさそうだったから多分病死だと思う。
腐乱したおっさんを想像してしまい、俺はチビりそうになった。
その日はじいちゃん家に泊まる日だったのだが、帰りたくて仕方なかった…
その夜の事。俺は怖くて怖くて寝付けずにいた。
じいちゃん家は部屋が3つと、部屋と玄関を繋ぐスペースに台所があったのだが、俺は玄関に1番近い4畳間の部屋で弟と寝ていた。
俺はこの部屋が苦手だった。何故だかわからないが。
布団の中で寝返りをうっていると、不意に窓を叩かれた。
コンコン、コンコン
!?
窓にはカーテンがかかっていて外の様子は見えない。
こんな夜中に一体誰が??いや、それ以前に…ここ3階だぞ!?
俺は恐怖で固まった。目をギュッと閉じてひたすら息を潜めた。
すると今度は玄関からノックの音がした。
コンコン…コンコン…コンコンコンコンコンコン!
ノックが段々激しくなると共にアン●ンマン!アン●ンマン!と連呼する声まで聞こえ出し、更には腐臭?のような嫌な臭いが漂い始めた。(俺の脳内だけだと思いたい)
俺の心臓はもう破裂寸前だった。
おっさんが俺を迎えに来たんだ…嫌だ…嫌だ…誰か助けてくれ!!!
すると襖の開く音がして、足音が玄関に向かっていった。
玄関の前でお経をあげている…じいちゃんの声だ。
しばらく読経が続き、じいちゃんの声が大きくなった。
「出て行けェ!!」
そしてじいちゃんが叫んだ。
既に恐怖が限界突破していた俺はじいちゃんの声に突き動かされるように部屋から飛び出し、じいちゃんに抱きついた。
俺は大泣きしていた。弟も大泣きしながら部屋から出てきた。
じいちゃん「もう大丈夫や。怖かったのう」
もうノックの音もおっさんの声も止んでいる。
俺は全身の力が抜けてそのままへたり込んだ。
その後俺と弟はじいちゃんの部屋で寝た。
じいちゃんの部屋には仏壇があり、じいちゃんは夜中ずっとお経あげてくれてたので、俺は安心して眠る事ができた。
そして次の日、俺は朝からばあちゃんに叩き起こされた。
これからお寺さんの所に連れて行くらしい。
これは関係あるのかわからないが、支度してドアに向かうといつも飾ってある鬼灯の実が枯れている。
俺はそこでまたチビりそうになった。
母ちゃんが迎えに来てくれて、俺と弟とばあちゃんとで寺に向かった。
そして結構長い事お経をあげてもらい、ブレスレット型の数珠を手渡された。
俺はどうやら霊が寄ってきやすい体質だかなんだからしくて、それでおっさんを引き寄せてしまったようだ。
それはうちの叔父(母ちゃんの弟)もそうみたいで、子供のころよく拾ってきてたらしい…にわかには信じ難いが。
そこからも色々あったけど、それはまた次回でも
余談
数年が経ち、俺は一人暮らしを始めた。
お寺さんにもらった数珠は肌身離さず身に付けていたんだ。
学校から帰ってきて上着を脱いだ時、ぽろっと数珠が手首から抜けた
あっ、落としたなーと床を見るも数珠は見当たらない。
上着に引っかかっているのかと裏返したり振り回したりしたが出てこない。
どんなに裏返しても、振り回しても、部屋の至る所を見て回っても無い…
消えてしまったのだ。それから2年が経ち、部屋を引っ越す事になったのだが、とうとう出て来ることはなかった。
俺は速攻母ちゃんに連絡して新しい数珠をもらってきたのだが、たまに付け忘れたりしていると変な事が起きる
今回はここまでです。
お疲れ様でした
後日談:
- この話での団地とは、四階建ての集合住宅の事を指しています。祖父はその三階の一室に住み、謎の男は隣の棟に住んでいました。
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