
友人のAさんは、ある日妻から頼まれたことがあった。
「弟が結婚することになったんだけど、特別な儀式を手伝ってほしいの」
「特別な儀式?」
結婚式の準備や出席を頼まれるのはわかるが、どうしてもその言葉が気になった。
「まあ、私たちの家系に伝わる風習みたいなものなんだけど、ちょっと特別だから……」
妻は少し戸惑い気味に言った。Aさんは、田舎の風習が面倒だと思いつつも、義理の家族の頼みを断るわけにはいかず、次の休日に高原の古民家に里帰りすることにした。
久しぶりに顔を合わせた義理の両親と弟は、温かく彼を迎えた。
「遠いところをありがとう。助かるよ」
「お兄さん、ありがとう。本当に感謝してます」と弟も頭を下げる。Aさんは恐縮しつつも、何か不思議な雰囲気を感じた。周りには、彼が結婚式を挙げたとき以来の顔ぶれが揃っていた。
「今日は特別な儀式だから、みんな集まってくれたんだ」と義母が言った。Aさんは心の中で「一体何をするのか」と疑問に思った。集まっているのは成人男性ばかりで、女性は彼の妻と義母、そして数人の親戚の奥さんだけだった。
「お嫁さんの姿は見えないのですが、どうして?」と尋ねると、皆が曖昧な返事を返すばかりだった。彼は何をするのか全く知らされていなかった。妻からは「着いたら説明があるから」と言われていたが、誰も何も教えてくれない。
夜が深くなり、大人数での宴会が始まった。義弟は親戚たちにお酌をしながら、頭を下げて回っていた。やがて、義父が全員に向かって声を上げた。
「それじゃ、そろそろ始めようか」
Aさんは緊張しながら義父の説明を聞いた。彼は一人ずつ部屋に行き、灯りを守る番をするのだと聞いた。義父は「誰かが来るかもしれないが、何があっても『嫁が来る約束だった』って言うだけでいい」と言った。
その言葉を聞くと、Aさんは一瞬、お通夜のような儀式を思い浮かべた。何かが不気味な気がしたが、彼は頷くしかなかった。
儀式が始まり、彼は一人で部屋に入った。薄暗い部屋には神棚と果物、お酒が供えられていた。蝋燭の灯りが揺れる中、彼は次第に眠気に襲われた。気づけば、ヒタヒタという足音と布を引きずる音が聞こえた。次の人が来たのだろうか?
障子の向こうに人影が映る。頭が異様に大きく、何かを引きずっている。影は不気味に止まった。Aさんが不安を感じていると、声が聞こえた。
「嫁が来る約束だったんだべ。おらが嫁だぞ」
後日談:
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