
ある冬の夜、友人が新しいマンションに引っ越してきた。彼は高層マンションの7階に住み、窓から見る街の風景に魅了されていた。引っ越してから約一ヶ月が経った頃、仕事から帰宅する途中、階段を上っていると背後に何かを感じた。振り返ると、知らない人影が彼の後ろを歩いている。
「誰だろう?」彼は不思議に思いつつ、そのまま7階へ向かう。ドアを開けようとした瞬間、その人影は彼の横をすり抜け、隣の部屋へと入って行った。
「隣の住人かな?」疑問を抱きながらも、彼はそのまま部屋に入り、友人にそのことを話した。友人は「隣には独り身の女性が住んでいるはずだ」と言う。彼は気になって、翌日、再び階段を上がっていると、また背後に気配を感じた。
振り返ると、昨日と同じ人影が隣の部屋に入っていくのを見た。彼はそのことを友人に再度話し、友人は「隣の人に聞いてみるよ」と言って、隣の住人に尋ねてくれることになった。
「今、家に入った人は誰ですか?」と尋ねる友人に対し、隣の女性は驚いた様子で「そんな人、いないわよ」と答えた。
数日後、友人は嫌な予感がして、マンションの管理人に聞いてみた。すると、驚くことにその隣の部屋は、数年前に自殺した男性の部屋だった。彼は事故のように、階段から転落して亡くなったという。友人はその瞬間、背後に感じた冷たい気配の正体を理解した。彼の隣には、もう何もないはずのはずの人が、まだそこにいたのだ。彼はその日から、階段を上ることができなくなった。彼の心に残ったのは、まるで彼を呼ぶかのような、冷たい視線だった。冷たく、そして虚ろな目で。彼は、その目に気づくことが恐ろしいことだと知っていた。彼の新しい生活は、もはや始まったばかりの悪夢に変わってしまった。
そう、彼の隣の部屋には、もう帰ってこない人の記憶が残り続けていた。
それ以来、彼は自らを隠すように、階段を使わずエレベーターを利用することを選んだ。だが、エレベーターの中で感じるその視線は、彼をいつまでもつきまとい続けた。
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