
あれは私が高校生くらいの時だったと思います。おそらく私はあの時いちどあの世のようなものに足を踏み入れたのだと今は思っています。
もう数十年経った今でもその時の恐怖と生還できた安堵感はハッキリと覚えています。
当時私はお洒落に目覚め始め、自転車で少し離れた洋服屋に買い物に行くのを楽しみにしていました。そこはS県のT市にあるショップでした。
いつものようにバイト代を財布に入れて自転車で40分ほどでしょうか。買い物に行った帰り道私はその体験をすることになります。
買い物には行ったもののこれと言ってめぼしい物はなく「今日はいいかな」となり手ぶらで帰ることとしました。
その日は初夏でしたが曇り空の蒸し暑い日でした。汗を大量にかきながら大通り沿いを自転車を走らせていた私は暑さから喉の渇きを覚えました。反対車線にコンビニエンスストア。しかしその大通りに反対車線に渡る信号は前後付近にはありませんでした。
あるのは経年劣化で塗装が剥がれサビが目立つ歩道橋。
半分上がって折り返してもう半分を上がり、反対車線へと渡るタイプの歩道橋でした。
「自転車を押して登るのも面倒だな」
と思いつつも喉の渇きには勝てず歩道橋を(階段の脇にスロープがあり自転車を押せるタイプ)登り始めました。
ふと折り返し先(位置で言うと自分の斜め上)から人が降りてくるのが視界の端に見えました。
「すれ違うのに気をつけないとな」
そう思いながら折り返しの広い場所に着くと降りてくる人など誰もいませんでした。
今思うとなぜあそこまでパニックになったのか。
なぜ自分の身間違いだと済ませなかったのか。
それは今、自分でも理解できません。
しかしその時の自分は異常なまでの不可思議を感じていました
(なんで?!)
(いたよね?)
(消えた?)
(違う。きっと降りてきてたんじゃない。登ってたんだ!)
(俺が登りきって渡る時後ろ姿が見えるはず!)
なぜか自分にそう言い聞かせ少し小走りで登りきった私に見えたものは
誰もいない ただ反対車線に繋がる橋でした。
普通ならそこで見間違いで済むはずなんです。
普通ならそこであんな発想になるはずないんです。
普通ではなかったんだと思います。その時の私は。
「え、まさか…」
そう呟いて私は歩道橋の中間地点あたりにフラフラと歩を進めました。
「と、飛び降りた…??」
そう、どうかしてる発想に急に囚われた私は恐る恐る歩道橋の柵から下を覗き込むという行為をすることになります。
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