
私が大学生の頃、姉と一緒に古いアパートに引っ越すことになった。 そのアパートは周りの景色とは違い、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。引っ越しの初日、荷物を運ぶためにエレベーターを使ったが、何かが妙に引っかかる感じがした。 それでも、私たちは気にせずに部屋に向かった。
アパートの廊下は薄暗く、壁には古い絵画が掛かっていた。それを見て姉は「この絵、なんか怖いね」と言った。私も同感だった。部屋に入ると、何かが視線を感じるような気がしたが、気にしないことにした。
数日後、アパートの住人から「このアパートには事故物件がある」と聞いた。どうやら、数年前に住んでいた住人の一人が、階段から落ちて亡くなったらしい。 その話を聞くと、私たちの中に不安が広がった。
それから、毎晩階段を上がるたびに不気味な気配を感じるようになった。特に、3階の階段に差し掛かると、何かがついてくるような感覚がした。ある晩、姉が「これからエレベーターを使うのはやめよう」と言った。私も同意した。
しかし、ある夜、ふと目が覚めると、姉が部屋を出て行くのを見た。私は心配になって後を追った。階段を降りると、姉は一人で3階の廊下に立っていた。何かに見入っている様子だった。
「どうしたの?」と声をかけると、姉は驚いたように振り返り、「あの部屋から声が聞こえた」と言った。その瞬間、背筋が凍る感覚が走った。 どうやら、あの部屋は未だに住人がいるとの噂があった。
次の日、私たちはその部屋のことを調べることにした。アパートの管理人に聞くと、「昔、そこで自殺があった」と言われた。話を聞くと、その部屋の住人は心に深い傷を持っていたらしい。彼女は周囲との接触を絶ち、最後にはあの階段から転落したそうだ。
私たちはその話を聞いて、もうそのアパートに住むことはできないと思った。引っ越しを決め、荷物をまとめた。しかし、最後に私たちがアパートを出る時、階段を降りると、あの声が耳に残った。
「帰らないで……」
今でも、あのアパートの前を通ると、何かが見えそうな気がして、胸が締め付けられる。あの声が、私たちを呼んでいるように思える。あの時、姉が見たものは何だったのか、今も考え続けている。あのアパートは、私たちに何を伝えようとしていたのか。あの影は、決して忘れられない。
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