
新着 長編
歩数計
ナースコール 3日前
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私は、そこまで読み進めてから、そっと顔を上げた。
自分の部屋の中を見回す。
玄関。
キッチン。
シンク。
クローゼット。
窓。
そして、布団の横。
誰もいない。
当たり前だ。鍵はかけてあるし、チェーンもしている。
そもそも、こんな狭いワンルームに、私以外がいたら気づかないはずがない。
それでも、足元の床が、さっきまで誰かが立っていたような気がしてならなかった。
その日から、私は鍵を二重にかけるようになった。
玄関の前に、靴をわざとバラバラに並べておく。もし誰かが入ってきたら、配置が変わるはずだ。
寝る前に、部屋の写真も撮るようにした。
玄関、キッチン、クローゼット、窓際、布団。
記録さえ残しておけば、なにかおかしなことが起きても、それが「本当にあった」ことだと自分で確かめられる気がした。
一週間ほど経った、休みの日の前夜。
私は珍しく、何も予定がなかった。夜勤もない。
それでも、習慣で歩数計だけは確認し、二千歩ほどしか動いていないことを確かめてから布団に入った。
「今日こそ、何も起きませんように」
そう呟いて、目を閉じた。
――コン、コン、と、どこかで小さな音がした。
目を開けると、部屋は真っ暗だった。
スマホの画面は消えている。枕元から、かすかに充電ケーブルの擦れる音がする。
心臓の鼓動が耳の中で響く。
さっきの音が、外なのか中なのか、判別できない。
電気をつける勇気は出なかった。
代わりに、手探りでスマホをつかみ、画面をつける。
時刻は午前三時ちょうど。
私は、ほとんど無意識のうちに、歩数計のアプリを開いていた。
「本日の歩数:3211歩」
寝る前と、ほとんど変わっていない。
安堵で息が漏れた、その瞬間だった。
数字の下に、小さく灰色の文字が現れた。
「共有中のデバイス:1」
そんな表示、今まで見たことがなかった。
心臓がまた跳ねる。
そこをタップすると、「同時に歩数を記録しているデバイス」という説明文とともに、接続中の機器の一覧が表示された。
・このiPhone
・不明なデバイス(近くの端末)
私は息を呑んだ。
「近くの端末」という文字の横に、小さなアイコンがくるくると回っている。
検出中、という意味らしい。
数秒後、灰色だった文字が、はっきりとした白に変わった。
「不明なデバイス:距離 0m」
その瞬間、背筋を氷水でなぞら
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