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歩数計

ナースコール 3日前
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グラフをさらにタップすると、「ルート表示」という項目があった。 歩数を元に、簡単な移動軌跡を推定してくれる機能らしい。 興味本位で押してしまったことを、私はすぐに後悔した。   白い画面の上に、細い線がうっすらと描かれた。 一直線に伸びては止まり、少し戻って、また曲がる。 まるで、狭い部屋の中を、誰かがゆっくり歩き回ったような軌跡だった。 その形に、見覚えがあった。 ――私の部屋の間取りだ。 玄関からまっすぐキッチンへ、そこから折れてクローゼットの前、窓際、テレビ台、そして布団の周りを、ぐるぐると。 「……嘘でしょ」 思わず声が出た。 ルート表示の下に、小さく時間が出ている。 「03:12 〜 05:47」 その時間、私は確かに眠っていた。 目が覚めた記憶はない。トイレにも行っていない。 それでも画面の中では、細い線が、布団の周りを何度も何度も回っていた。 まるで、私が起きるのを待っているみたいに。   その日から、私は寝る前に歩数計を確認するようになった。 仕事終わりで、ほとんど動いていない。だから、寝る前の数字は大体二千〜三千歩。 それをスクリーンショットで保存してから、充電ケーブルにつないで寝る。 最初の数日は、目が覚めても数字は変わっていなかった。 「あれはバグだったんだ」と自分に言い聞かせて、少し安心し始めた頃だった。   四日目の朝、喉の渇きで目が覚めた。 カーテンの隙間から差し込む光が、いつもより白く感じる。 枕元のスマホを手探りで探し、画面をつける。 時間は午前六時。いつもより少し早い。 なんとなく嫌な予感がして、寝ぼけ眼のまま歩数計を開いた。 「本日の歩数:9021歩」 心臓がどくんと跳ねた。 慌ててスクリーンショットフォルダを開く。 寝る直前に撮った画像には、「本日の歩数:2894歩」と、はっきり写っている。 「……増えてる」 夜の間に、六千歩以上。 手のひらがじっとりと汗ばむ。 震える指で、また「詳細」と「ルート表示」を開いた。   今度の軌跡は、もっと細かかった。 玄関まで伸びた線が、ドアの前で何度も往復している。 そのあとキッチンの前、シンクの前で少し留まり、クローゼットの前に移動して、また戻る。 窓際に近づいては離れ、最後に、布団の横でぐるぐると小さな円を描いて止まっている。 時間表示は「02:01 〜 05:58」。

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