
明治二十年代――
十才になるコマツは尋常小学校から家への道を急いでいた。
今日は母のトキに家の手伝いを頼まれていたのだ。
途中、同級生の女の子たちと別れ田んぼのあぜ道を急いで家に向かっていた。
十一月の空は鉛色の鈍い色をしており今にも雨が降りそうな天気であった。
コマツの家は農家で、コマツは農家の娘としてまた長姉として家の手伝いや妹たちの
面倒を見ていたのだ。
家の近くに山があり、山の入り口付近に祠がある。そこを通りかかったときのことである。
コマツの前にふいに同い年くらいの女の子が現れた。見たこともない子であった。
同じ地域の子ならば尋常小学校に通っているため知っているはずである。
家庭の事情で尋常小学校に通えない子もいたが、それでも地域の子であればすぐにわかる。
しかし、この女の子は全く知らない子であった。
その子はコマツのところにつーっと近づいてきてこう言った。
『そこのお山の上で一緒に遊ぼう』
コマツは母から頼まれていた家の手伝いがあったため早く帰りたかったが、その子が
半ば強引にコマツの手を引っ張って山の中に連れて行こうとしたのだ。
コマツは少しだけならいいかと思い女の子と一緒に山の中に入っていった。
山の中に入るとすぐに日が暮れかかり辺りが段々と暗くなってきた。
女の子はコマツの手を引っ張ってどんどんどんどん山の中に入っていく。
コマツがどこまで行くのかと尋ねても答えない。
段々不安になってきたコマツは不意に尿意をもよおした。
『おしっこしたいから少し待ってて』
コマツはそう言うと女の子の手を振り払って、林の中に入り着物の裾をおろすと
シャーッと排尿をはじめた。
排尿がおわりすっきりしたコマツは母との約束を思い出してはやく帰らないといけない
と思い、女の子に気づかれないようにこっそり林の中をかけて山をくだった。
家に帰り着いたコマツは母に駆け寄ってそのことを話した。
母は『それは神隠しだ。あのあたりのお山には昔から神隠しの話があるんだよ。
もしあの時その子についていっていたら二度と家には戻ってこれなかったよ。』
――
曾祖母の姉・コマツが体験した話
後日談:
後日談はまだありません。
この怖い話はどうでしたか?
chat_bubble コメント(2件)
コメントはまだありません。


