
長編
ついてくる……?
たっくん 2016年5月14日
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今から約12年前の冬、高校の部活帰りの道での出来事でした。
他の部活メンバーはバスで帰ったのですが、その日の私は、どうしても歩いて帰りたい気持ちにとらわれ、メンバーと別れ、ひとり、家への道を歩いていました。
帰り道の途中には墓地があります。
小さい頃から、
「御先祖様方のお家だよ~。ずうっと、あなた達を見守ってくれてるんだよ~。」
と教えられて来たので、私にとってはとてもありがたい場所でした。
日が落ちて暗くなると不気味な場所になりますが……(笑)
その墓地半ば辺りまでくると、
「ぽつ……ぽつ……」
と雨が降り始めました。
鞄から常に持ち歩いている折りたたみ傘を取り出し、広げようとした時、
「コッ 、コッ……」
とハイヒールで歩いてるような音が聞こえました。
私は
「本格的に降り始めたかな?」
と思い、急いで傘を被り、墓地を抜けようと急ぎ足で歩きました。
もうすぐで墓地を抜けようという場所に来た時、また
「コッ……コッ……」
先程聞いた音と同じ音……
と同時に、近くにあったカーブミラーに、私の姿と私の後ろ……およそ10m辺りを赤い傘とロングコート、ハイヒールを履いた女性が歩いていました。
(カーブミラーって、雨が降ってる時にはおおよその形と色しか映らないんですが、その女性の姿は何故かハッキリと映し出されていました)
「この時間に、この道を通る人、私以外にもいるんだなぁ……」
そう思い、振り返ってみると……
誰もいない……
(周りは全て、お墓なんです!私の後ろ側は特に!)
「……小道にでも入ったんだろう!(汗)」
無理矢理そう思い込み、私はまた歩きだしました。
墓地を抜け、住宅街につき、しばらく歩いているとバス亭近くに着いた所でふと、上を見ると
(なぜか曲がり角でもないところにカーブミラーがある(笑))
先程の墓地で鏡越しで見かけた女性が5m程後ろにいました。
私は少し怖くなり、家までの道をもうダッシュ!
その間、ずっと女性の
「コッ……コッ……コッ……」
という音が周りに響いていました。
(少なくとも、私には聞こえていました。)
ようやく家に着き、鍵を開け、扉を閉める。
母に
「どうしたの?そんなに息きらして……あ、洗濯物出すなら、夜のカン(冷たい風)で乾かすから回してきてー」
と言われ、
「えぇー!?……こっちはそれどころじゃなかったのに……」
と思いながら言われた通りにベランダに向かい、カーテンを開けると
自宅マンションのすぐ下の道……
ちょうど目の前の道に
先程の女性が、
顔を上げて、こちら側を見、ニタァと笑うと大口を開け、ゲラゲラと笑いだしました。
みるみるうちに、口が耳まで裂け、顔の上半分が後側に沿っていき、頭半分が切落ちる直前でフッと姿が消えました。
その後6年間に渡り、私がどこに住んでいても同じ時期になるとその女性が現れ、家路を追いかけてきました。
年々、少しずつ距離を縮めながら…
※
ここからは追記になります。
書かない方が怖いと思うのですが、やはり事実は全て公表した方がいいと思ったので、続きを載せることにしました。
後のお話を知りたい方はどうぞお読み下さい。
高校を卒業後すぐに上京、3年後すぐ実家に帰ることになったのですが、その間も女性の霊は私について来ていたようで毎年現れていました。
しかし、初めに出会ってから6年後の清明祭、墓地の中に新しいお墓が建てられており、私はそのお墓に惹かれるように人混みの中へ近付きました。
「まだ若かったのに…」
そう言って黒い着物を着た50代くらいの女性はお墓に手を合わせながら泣いていました。
左右にある花瓶にはテッポウユリの花と黄色い菊が風に揺れている。
女性は膝の上に置いていた写真立てを両手でそっと持ち上げ、そのまま抱きしめた。
そして立ち上がり、こちらを向いて私に言った
「あなた…〇〇のお友達?」
「…いいえ……ただ、気になったので…すみません、覗いてしまって…う、わ!うわぁ!」
私は慌ててお辞儀をしてその場を立ち去ろうとしたのですが、足がうまく動かなく、
ド派手に転んでしまいました。
「大丈夫?」
「ド派手に転んだなぁ(笑)」
「女の子は腰、大事にしないとだぞー(笑)」
おばさん(50代の女性)含め、周りの親戚だろう人達も苦笑しながら、でも心配そうな顔で私を助け起こしてくれました。
「すみません、ありがとうございます!大丈夫です!」
私は恥ずかしい気持ちと痛さを堪えながらおばさんの手をとり、立ち上がりました。
その時に、おばさんのもう片方の手の中にある写真立てが見えました。
「……その人…」
そう、写真に写っている人は6年間の間、私を追いかけ回していた女性でした。
「この写真?……私の娘なの…」
おばさんはそこで知り合いでもなんでもない私に娘さんのことを話してくれました。
少し不器用で人とは一線距離を置いて接する。だけれども、凄く優しい子だったそうです。
ひとり暮らしを始めた矢先、一週間程連絡が途絶え、心配になって部屋に行ったところ、首を吊って亡くなっていた。
遺書には、好きな人ができたこと、しかしその男性は偏屈な性癖があり、別れ話を持ちかけるとストーカーまがいの行為を繰り返しするようになった。そして、自殺に至るまでの間のことが書かれていたという。
でも、その殆どは家族に対しての謝罪だったそうです。
「こんな弱い娘でごめんなさい…話せないまま、いなくなって、ごめんなさい…」と……
「もっと頼ってほしかった。悩みを打ちあけてほしかった。頻繁に娘の様子を見に行けば…生きていてほしかった…」
母親の言葉に、親戚の人達も
「命あっての人生さ〜、どんなに苦しくても、親より先に死んじゃぁダメよ〜」
「誰も苦しんでいることに、気づいてやれなかったんだ。あの子を追い詰めた男は憎いが、最終的にあの子を死に追いやったのは私等かもなぁ。元々、口数少ない子だった。こっちから聞いてやるべきだったんだ」
と悲しい顔をしていた。
ふと、お墓の方を見ると、彼女がいた。
いつもの、追いかけてくる時の無表情の顔ではなく、母親を哀しそうな目で見ていた。
「あの子の話は他の人には普段言わないんだけど…あなたには話を聞いてもらいたかった。なぜかしらね。」
母親は、涙をハンカチで拭きながら私に微笑んだ。
「そうですね。…もしかしたら、娘さんがお母さんを心配しているのかもしれませんね。悩みや悲しい話は誰かに話すと、少しは楽になりますから…」
私がそう言うと、
「そうね…ほんの少し、楽になった気がするわ。ありがとう。」
と、母親は私に笑いかけ、最後にお墓を向いて手を合わせるとじゃあ、そろそろ…片付けの準備を始めた。
片付けを始めた母親と親戚の横で、彼女の霊は私に対して今までの怖い顔ではなく、優しい笑顔を浮かべ、小さく手を振ってお辞儀をした。
私は彼女に笑顔で小さく手を振ってから、私の家族がいる場所へ向かった。
それ以来、彼女の霊は私の元に現れていない。
今思うと、彼女は1人で夜道を歩く私に警告していたのではないだろうか。
早く家に帰す為に、わざと怖いお化けのふりをして…
私の憶測にすぎないですが(笑)
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