
短編
覗く側
匿名 2日前
chat_bubble 0
996 views
夜、俺はアパートのベランダに立ち、望遠鏡を覗き込んでいた。趣味の天体観測をするはずが、いつの間にか向かいのマンションの窓を見ていた。
ふと視界に、一人の男が映る。窓辺に立ち、こちらに背を向けている。スーツ姿で、まるで誰かと話しているようだ。
(電話でもしてるのか?)
好奇心に駆られ、ピントを合わせたその瞬間——
男がぴたりと動きを止めた。
そして、ゆっくりと振り向く。
望遠鏡越しに、男と目が合った。
冷たい汗が背筋を伝う。こちらが覗いていることに気づかれたのか?
次の瞬間、耳元で囁くような声がした。
「お前が覗く側だと思うな」
驚いて飛び退く。望遠鏡を倒し、慌てて辺りを見回すが、誰もいない。
恐る恐るもう一度マンションを見ると——
そこには、何もない窓があるだけだった。
男など最初から存在しなかったかのように。
この怖い話はどうでしたか?
chat_bubble コメント(0件)
コメントはまだありません。