
今でも忘れられない出来事があります。
春の夕方、私は母と一緒に母方の祖母が入所している高齢者施設へ行きました。その時の祖母は、いつもと違う様子でした。普通に会話はできるものの、私の顔を見ては「こんなに大きくなって…素敵になったね」と言うのです。
母は驚いて、「この子、数日前にも会ったのよ」と言いましたが、祖母はただ微笑むだけでした。今日は何かおかしいなと思いつつ、私は祖母と色々な話をしました。「また来るね」と告げて、母と施設を後にしました。
その日の夜、電話が鳴り、母の兄からの連絡が入りました。「祖母が危篤だ」とのことでした。急いで車に乗り込み、施設へ戻りました。
病室に入ると、祖母は昼間とは別人のように衰弱していました。私は祖母の手を握り、「おばあちゃん、私だよ。分かる?」と問いかけると、祖母は目を開け、私を見つめながら「分かる」と言って微笑んでくれました。
その後、私は部屋を出て、祖母と母の兄、母の三人にしてあげました。ドアの前で振り返り、祖母の姿を見てから、自宅に戻りました。帰りの車の中で、何かの匂いがしました。手のひらを嗅ぐと、介護用のクリームの香りがしたのです。えっ、私の手から?と思いながら何度も嗅いでいました。
家に着くと、手を洗い、再び手のひらを嗅ぐと、今度はクリームの香りではなく、何か薬品のような匂いがしました。なんだか嫌な予感がし、布団に横になりましたが、手のひらの匂いが気になって仕方ありませんでした。
その後も何度か匂いを嗅いでいましたが、夜中の3時頃、ふと嗅いでみると、薬品の匂いがしなくなっていました。その瞬間、嫌な予感が胸を締めつけました。何度も手のひらの匂いを嗅いでも、香りは戻りませんでした。
静まり返った家の中、電話が鳴り、母から「今、亡くなった」との知らせがありました。祖母が亡くなった瞬間、私の手のひらから薬品の匂いが消えたのです。この出来事は今でも不思議で、忘れられません。そのため、手のひらを嗅ぐことが私の癖になってしまいました。
大好きだった祖母にもう一度会いたいです…
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