
美和とは高校時代からの友人で、同じ大学に進学した。卒業後はそれぞれの道を歩み、ほとんど会わない日々が続いていたが、時折電話やSNSで近況を報告し合っていた。
私は地元の小さな会社で事務職を続けている。一方で美和は、安定した職に就けず、アルバイトを転々としながら生活している。そんな彼女は、つい最近結婚したと聞いた。式にも呼ばれたが、相手は年上で、外見的には彼女の好みとは言えない印象を受けた。
それから二ヶ月後、秋の夜、美和と駅近くのカフェで再会した。彼女の表情はどこか曇っていた。
「美和、どうしたの?」
私は心配になり、聞いた。
「実は…結婚してから問題があって…」
彼女は驚くべきことを打ち明けた。旦那の直人とは、新婚生活を始めたばかりだが、何かがおかしいのだという。
「直人、実は私の仕事場で知り合ったの。年齢は四十代半ばで、体型は太っていて、あまり魅力を感じなかったんだけど、性格は穏やかで、経済的には安定しているみたい。」
美和は続けた。
「彼は以前、母親と一緒に住んでいた家に引っ越すことになったんだけど、最初は普通の新婚生活だったの。ただ、最近、何か変な気配を感じるようになって…」
「気配って?」
彼女は少し俯き、言葉を選ぶように話を続けた。
「夜、リビングで一人でいると、背後から誰かの視線を感じるの。最初は気のせいだと思ってたけど、次第にその声が聞こえるようになった。」
「声?」私は興味を持ち、さらに聞く。
「うん、ボソボソと何かを呟く声が。最初は『出てけ』って聞こえた。何かに怯えながらも、私は彼に話してみたけど、彼は仕事が忙しくて真剣に受け止めてくれなかった。」
美和の声は不安に満ちていた。彼女は続けた。
「ある晩、私が寝室で寝ていると、またその声が聞こえてきた。『出てけ、売女』って。恐ろしくなって起き上がった時、天井の隅に目を向けると、そこに何かが見えたんだ。」
「何が見えたの?」
「白い手が、指先から血を流しながら、こちらを見ていた。心臓が止まりそうだったわ。」
私は恐怖を感じながら、美和の話を聞いていた。彼女はさらに続ける。
「怖くなって直人に言ったんだけど、彼は『それは俺の母親だ。約束してるんだ』と言ったの。」
「約束?」
「私が『それをどかさないなら離婚する』と言ったら、彼は黙り込んでしまった。だから私は今、実家に戻ってきたの。」
後日談:
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