
これは、私の祖母に起こった不思議な出来事の話だ。彼女は小さな町の書店で働いていて、毎日店を開ける前に必ず私に言う。「気をつけて行ってらっしゃい!」と、私が出かける時に。
しかし、ある秋の夕方、私は急いで出かけなければならず、祖母にその言葉を言えずに家を出た。心に何か引っかかるものを感じながら。
その日は特に忙しく、店の中は常連客で賑わっていた。だが、ふとした瞬間に、目の前にあった古い書籍の一冊が、まるで誰かに押されたかのように床に落ちた。驚いて拾い上げると、表紙には「不吉な予言」と書かれていた。
その時、私は何か嫌な予感がした。祖母に電話をかけようと思ったが、気が散ってしまいそのまま忘れてしまった。すると、次の瞬間、店の照明が一瞬瞬いて、すぐに戻った。店内は静寂に包まれ、何かが不気味に漂っている気がした。
その数時間後、ようやく祖母に連絡が取れた。しかし、電話に出たのは見知らぬ男性だった。彼はこう言った。「おばあ様が事故に遭われました。すぐに病院へ来てください。」
恐ろしいことに、祖母はそのまま戻らなかった。葬儀の場で、私はあの「不吉な予言」の本の表紙を思い出し、全身が凍りついた。祖母が私に言えなかった言葉の重みが、今でも心に残っている。あの日、あの瞬間に感じた気持ちは、ただの偶然ではなかったのかもしれない。私の心の中に、恐怖が静かに根を下ろしている。
その後、書店の片隅にあった古い本が、一冊ずつ消えていくことに気が付いた。まるで、私の祖母の存在が、少しずつ薄れていくかのように。私はその本を手放すことができずにいた。何かが、私をその場所に引き寄せているのかもしれない。
それ以来、私は決して、何かを言い忘れないように心がけることにしている。なぜなら、時には言葉が命を分けることがあるのだと、身をもって知ったからだ。
この話を聞いた人は、私と同じように気をつけて欲しい。言えなかった言葉は、時に不吉な前触れとなることがあるのだから。
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