
長編
ノック
匿名 2023年7月27日
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この話は、私が23歳くらいの時に友達と遊びに出掛けた帰り道での体験談です。
当時、私の結婚が決まっていて、相手の方が農家だった為、結婚後に気軽に友達と遊びに行けないなどと話、独身最後だからと仕事が休みの日は、友達とスケジュールを合わせ、良く遠くの方まで車で出掛けていました。
あの頃は、今の様に携帯電話という物は無く、代わりにポケットベルという物で、連絡を取り合っていました。
確か、結婚式を二か月後に控えた時だったと思います。
ボウリング場とゲームセンター、カラオケ、軽めの飲食店が近場にある所へ遊びに行き、丸一日遊びまくり、家に着く頃には、深夜1時を軽く超えるだろうなと、いう時間を友達を乗せ車を走らせていました。
街中を走っている時は、街灯やまだ営業中の店のネオン等があり、人も車も多く、まだ先程の事を色々話ていたので車内は笑い声が途絶える事はありませんでした。
しかし、家が近くなるに連れ街灯も民家も疎らになり、すれ違う車といえば長距離を走るトラックでしたが、それも頻繁には通らない寂しい道を通る頃には、話のネタが途切れ途切れになり、相づちを打つ様な口数少なくなりました。
国道を時速60くらいのスピードで車を走らせていました。
とある歩道のない道で反対側にある小学校へ通う小学生達が渡る陸橋のある町には、色々と不気味なスポットが幾つかあり、その場所を通るときは、何故か毎回緊張していました。
深夜、良く分からない石碑の様な物がある場所が丁度、緩やかなカーブになっていて、少しだけスピードを落とした時でした。
当時乗っていた軽自動車の助手席側の後部座席の窓を〔コンコン〕とノックする音が聞こえました。
「えっ?」と思わず口に出たほど驚きましたが、車を止める事が怖かった私は、友達に「今の聞こえた?」と聞くと友達にも聞こえたらしく「うん。なんかノックされた感じだったよね?」と二人してプチパニックになりながら、その音のことで少しだけ会話が続きましたが、その場所を離れるに連れ、音の正体も分からないまま車を走らせ、また会話が途切れた頃、陸橋のある場所を通過した時に「あっ!」と友達が声を上げました。
思わずブレーキを踏みそうになった私でしたが「えっ何?」と友達に聞くと、小学1年生が被っている様な黄色い帽子が見えたといい後ろを振り返っていました。
もう深夜1時近くなのに、小学生がいるはずがありません。怖くなった私達は、忘れ物が、何処かに置いてあったのだろうと思うようにしました。そして、お墓が左右にある場所を通り掛かろうかという時、また助手席側の後部座席の窓を〔コンコン〕とノックされました。
二人共、大袈裟なくらいビクッとし、友達はサイドミラーを私はバックミラーを確認しましたが、何も見えないし何もありません。
二人して「何の音?」と再びプチパニックになった時、友達のポケットベルが鳴りました。
慌ててポケットベルを取り出した友達が表示されている数字を見て、更にパニックになりました。
【4949】至急至急…。
その発信者を聞いた私もパニックになりました。だって、友達のポケットベルの番号を知る由もない私の結婚相手でしたから…。
少し前まで楽しく笑いながら遊んでいた事を数日前の出来事だったかの様に遠退く記憶。
冷静さを取り戻す為、自販機がたくさん列んだパーキングエリアに車を止めました。私は、友達にもう一度、確認してみる様に言いました。車の振動とかで見間違ったのではないかと思ったからです。
私と友達が覗き込んだ画面表示は紛れも無く私の結婚相手の家の……。
冷静さを取り戻す為に止めた車の中で、二人共冷静さを欠いていました。それでも、家まではまだ遠い地点、車を走らせなければイケない。パニックのまま車を運転していたら事故を起こす可能性もある。
私達は、飲み物を買おうと車を降りました。その時、車の後部座席の窓も確認しましたが傷や擦れなどはありませんでした。
飲み物を飲んで少しだけ冷静さを取り戻して来たので、状況を整理してみましたが、何度考えても分からず理解出来ませんでした。その場に20分くらい居たでしょうか…早く帰りたい反面、今まで経験した事のない気味の悪い出来事に何とも言えない気分でした。
それでもいつまでも此処に居てもしょうがないと、より慎重に車を走らせる事にしパーキングエリアを出ました。
車内のちょっとした物音にさえビクつきながら、その不気味な町を通り過ぎようかという時、〔コンコン、コンコン〕とまた後部座席の窓をノックされました。違ったのは、運転席側の後部座席の窓だった事。
私はビクつきながら、サイドミラーを確認しましたが何も見えませんし、変わった所などありません。バックミラーも確認しましたが状況は同じでした。友達の変に緊張している様子も伝わり怖さが増しました。
それでも車を止める事無く走らせ、隣町を知らせる標識が目に入った時〔コンコン、コンコン〕が〔ドンドン、ドンドン〕になり、それも助手席、運転席どちら側の後部座席の窓から音が響きました。
そして……屋根、ボディ、リアへと音は移動して〔バンバン、バンバン〕と車が壊れそうなぐらいの力で叩き続けられました。友達は耳を塞ぎ前のめりになって、音が鳴るたび、「ヒッ」と悲鳴を上げていました。
車が隣町へと入ると、音は消え静寂に包まれました。その後、言いたい事はたくさんあったけれど考えが纏まらず、二人共黙ったまま帰路に着きました。
あれは何だったのだろうと、今でも分かりません。
因みに、私にも友達にも霊感などというものは全くありません。ただ、何と無くあの町は不気味な所だと思うだけです。
無駄に長い話になりましたが、お付き合い下さりありがとう御座いました。
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