
私たちが新しく引っ越したのは、古いアパートだった。薄暗い廊下には、かすかなカビ臭が漂い、周囲は静寂に包まれている。部屋に入ると、壁には古びた絵がかかっており、どこか懐かしい気持ちになったが、同時に不安も感じた。特に、狭い廊下の奥にある小さな収納スペースが気になった。
「この収納、何か面白いものが見つかるかもね」と、妻が言うと、私は少し不安になった。「でも、使ってないものが多そうだし、そっとしておこうよ。」
その数日後、友人が遊びに来てくれた。彼は「収納を開けてみようよ」と言い出し、私たちにその提案をした。しぶしぶ開けると、古い鏡が一枚、埃をかぶっているのを見つけた。鏡は美しい装飾が施されていたが、どこか不気味な輝きを放っていた。
「これ、どこで見つけたの?」と友人が聞くと、妻は嬉しそうにその鏡を持ち上げた。「これ、飾ったら素敵だと思う!」
しかし、その日から異変が始まった。夜になると、廊下の端から冷たい風が吹き抜け、鏡の中に自分たちの背後に誰かが立っているような影が映った。最初は気のせいだと思ったが、次第にそれは現実のものとなった。
ある晩、目が覚めると、鏡の前に立つ影を見た。その影は、顔がぼんやりとしていて、まるで私たちを見つめているかのようだった。恐怖が私の心を掴み、その瞬間、耳元で囁かれた。「お前たちはここから出られない…」
朝になると、鏡は元の位置に戻っていたが、その周囲には黒いシミが広がっていた。私はそれを見て、背筋が凍る思いをした。友人は「これ、何かヤバい気がする」と言ったが、妻は「大丈夫、ただの気のせいよ」と言ってそのまま放置した。
引っ越しの準備を進める中でも、あの鏡がいつも私たちを見ているような気がしてならなかった。最後にアパートを出る前、私はその鏡を収納に戻そうとした瞬間、重い音がしてドアがバタンと閉まった。
振り向くと、鏡の中には、今までに見たことのないほどの恐ろしい笑顔の影が映っていた。目がひび割れ、口が裂けたその影は、「逃げられない…」と再び囁いた。
私たちは急いでアパートを後にしたが、あの鏡の呪いは終わったとは思えなかった。どこかで、私たちを見守っているような気がしてならない。引っ越した先でも、いつもその影がちらついている。そして、最後に気づいたことがある。それは、私たちを守るはずの鏡が、どこかの収納の中でまた現れることだった。
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