
数年前の冬の寒い夜、僕は高層ビルの屋上で警備のアルバイトを始めた。そこは都会の中心にそびえるビルで、周囲は明かりで賑わっているが、屋上は静まり返っていた。
仕事は簡単で、ただ決められた時間に屋上にいるだけだった。もし雪が降ったら、会社に知らせれば帰っても良いという、かなりゆるい内容だった。それでも、夜の屋上での警備は、どこか不気味で孤独だった。
この屋上は、近くの公園で行われるイベントのために仮設のステージが設置される予定だったが、準備が遅れていて、警備員を配置したまま待機することになった。周りには何もなく、ただ静かなビルの上で、ひたすら時間が過ぎるのを待つだけだった。
そんなある晩、先輩からの引き継ぎがあった。「夜中に誰かがいるけど、無視してていいよ」と。
その言葉に僕は驚いた。「誰がいるって?」と尋ねると、先輩は淡々と説明した。屋上の端に赤いコートを着た女性が立っていると。彼女はいつの間にか現れて、ただこちらを見ているのだという。目を凝らしても、彼女の顔はわからなかった。
初めは怖かったが、時間が経つにつれ、彼女がずっと同じ場所に立っているのが気になり始めた。何をしているのか、何か意味があるのかと考えるうちに、その存在が不気味さを増していった。
ある晩、僕は彼女の姿を見た。赤いコートが夜空に映えて、彼女は静かに立っていた。段々と周囲が暗くなるにつれ、彼女の姿は薄れていくが、何か目が離せなかった。
その日、交代の警備員が来るまで、彼女のことを考えていた。彼女は一体何を見ているのか、何か目的があるのかと。
明るくなり、交代の警備員が来ると、僕は彼に聞いた。「あの赤いコートの女性、見たことありますか?」すると彼は少し考え込んでから言った。「ああ、あの人、毎晩いるよ。何もしないけど、ただ立ってる。」
その言葉に、僕は少し安心したものの、同時に疑問が残った。彼女は一体何を見ているのだろうか。ただの観察者なのか、それとも何か意味があるのか。
数週間後、工事が始まると、次第に警備の仕事から遠ざかっていった。でも、あの赤いコートの女性が何を見ていたのか、今でも気になって仕方がない。もしかすると、今も夜の屋上に立ち続けているのだろうか。
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