
私は数年前、廃病院で看護師として働いていました。
毎日患者の世話をし、病院の静けさに慣れていた私ですが、実際にはこの場所が持つ不気味な雰囲気には気づいていませんでした。
それは、患者もいない静かな冬の夜のことでした。
お腹が空き、軽食を終えた私はトイレに行くことにしました。
通常の病棟のトイレではなく、古びた診察室のトイレが好きでした。
しかし、その日は患者もおらず、病院全体が静まり返っていました。
私は診察室のカギを持って、無人の空間に入ることにしました。
中に入ると、異常なほどの静けさが広がっていました。
用を足しながらも、スマホをいじって時間を潰していました。
その時、廊下からカサカサという足音が聞こえてきました。
誰かいるのかと不安に思いながらも、無視していました。
音は徐々に近づき、トイレの前で止まった気配を感じました。
何故入って来ないのか、疑問に思った瞬間、
「ザッザッザッ!」と不自然に速い足音がトイレの前まで迫りました。
私は驚いて「誰だ!」と大声で叫びました。
すると、ドアが突然強く押されて、音を立ててしなり始めました。
恐怖から急いでズボンを上げ、水を流し、ドアを開けました。
しかし、そこには誰もいなかったのです。
廊下も確認しましたが、誰一人として見当たりません。
その後、看護師仲間に聞いても、誰も廃病院に入った者はおらず、以降、私はこの場所に一人で入ることは決してありませんでした。
その夜の静寂が、今も忘れられません。
どこかにいるかもしれない"何か"が、私を見ている気がしてなりませんでした。
この体験は、ただの幻覚だったのか、それとも本当に何かが私を見ていたのか。
それ以来、廃病院の暗い廊下を一人で歩くことは、私の心に深い恐怖を植え付けたのです。
真実は、静寂の裏側に潜んでいます。
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