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長編

迷い込んだ遭難者

しもやん 3日前
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分岐点に立ち、ケルンとしての役割をまっとうする。  じゃんけんで勝った者から好きな役割を選べるということになり、わたしは最初の一回で二人に負けてしまった。もはやどちらが勝とうが同じことだった。      *     *     *  山中に一人取り残されるというのは想像以上に心もとない。  時刻も15時を回り、陽はだいぶ傾いている。場所は2合目から二十分程度登った地点なので、休憩なしで降りれば三十分もあれば人里へ出られる。風がひっきりなしに吹き渡り、ときおり鹿らしき動物が近くを駆け抜けていく。そしてかたわらには遺体がある。まともな精神状態を保てというほうに無理がある。  何度も腕時計で確認するも、そのたびに一分も経っていないことを知って愕然とさせられる。そんなやり取りを何度もくり返すのにうんざりしたわたしは、意味もなくあたりをぶらぶら歩いて気を紛らわせていた。すると遺体から少し離れたガレ場の岩の上に、小さな手帳が落ちているのに気づいた。ハンディタイプの小型で、ワイシャツの胸ポケットに入ってしまいそうなほどのものだった。ベテランの山屋なんかは天気図をラジオ放送から流れる情報を頼りに自分で書いたりする。きっと彼もそのたぐいだったのだろう。  岩は凹凸の少ない平らなもので、この上でなら字が書けそうなあんばいだった。わたしは好奇心に勝てず、それをめくってしまった。最初のページには天気図ではなく、次のような文言が記してあった。  この魔の山に迷い込んで二日経った。自分の正気を保つために今日から記録をつけようと思う。  わたしは首を傾げた。F岳を言うに事欠いて魔の山とは。ちょっと大げさな気がする。ページをめくってみる。※以下の記載内容については当方で適当に内容を補完していることをあらかじめ断っておく。原文は手帳の水染みや破れによってところどころ判別不能な部分があった。 10月15日 晴れ  迷い込んで2日め。地形図を参照して現在地は特定できている。2合目から分岐する支沢に入ってしまったのはまちがいない。ここを降りれば出合に着いて本道に合流するはずだ。なぜ戻れないのか理解できない。リングワンダリングというやつだろうか。しかし何度もコンパスで方角は確認している。東に歩いているはずだ。気づくと自分が目印として落としたスリングのある地点に戻っている。気が狂いそうだ。  日記は神経質そうな細かい字で、小さな手帳にびっしりと

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