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長編

迷い込んだ遭難者

しもやん 3日前
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 これはわたしが20代、まだ実家住まいのころ、入団していた消防団活動で体験したエピソードである。特定を避けるため意図的な改変は入れてあるものの、大筋では起こった通りであることを最初に断っておく。  消防団と呼ばれる組織がある。  前身は戦前の青年団にまでさかのぼる由緒正しい団体で、その活動は名前からもわかる通り、主に消火活動に携わっている。公務員で消火活動を専門に行っている消防署員とのちがいは、消防団の構成員は自治体の有志によってなされているという点であろう。  都市部にお住いの読者には想像もつかないだろうが、田舎は住民が各地に点在している割に消防署は少なく、通報から到着までにどうしても時間がかかる。火事の発生件数も高齢者が多いせいで少なくなく、出動も多い。  そうした負担を軽減するため、有志――要するにボランティアで消防活動をやっているのが彼らである(実際は準公務員という肩書があり、年収もわずかながら支給されるのだが、活動内容に比してまったく釣り合っていないので事実上タダ働きである)。  活動は消火だけではなく、堤防決壊時の防水、行方不明者捜索、操法大会の猛特訓、果ては夏祭りの交通整理にまで駆り出される始末である。おまけに軍紀は体育会系のノリがすっかり消滅した昨今の若者がただただ当惑するばかりの、ウルトラ縦社会である。当然自発的な希望者は皆無であり、各村の区長たちは毎年生贄を選抜するのに汲々としているわけだ。  わたしは25歳になったときに徴兵された。断れば懲罰的な協力金の支払いだけでなく、〈ムラ社会に非協力的な調和を乱す人間〉という烙印を押され、本人はおろか両親もまともに暮らしていくのが難しくなる。消防団入団を断るという選択肢は事実上存在しない。  前置きが長くなったが、わたしが入団させられていた組織の全貌は上記の通りである。      *     *     *  季節は秋だったと思う。残暑もすっかり鳴りを潜め、行楽に適したすがすがしい日和が続いていた。  土曜日の早朝、わたしは消防団からの招集を受けて地元の公民館に出頭した。一週間前から近所の里山に入山したまま帰ってこない登山者がおり、警察と消防署の手が足りないので捜索の協力を要請された由。分団長が全員に喝を入れ、われわれは貴重な土曜休みを捜索につぶされたことにうんざりしながらしぶしぶ歩き始めた。  捜索現場は三重県の鈴鹿山脈F岳である。この山脈は千

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