本当にあった怖い話

怖い話の投稿サイト。自由に投稿やコメントができます。

長編

迷い込んだ遭難者

しもやん 3日前
怖い 255
怖くない 212
chat_bubble 0
38,381 views
るのは無理である。  結局なんの収穫もないまま、撤収することになった。下山時には上から下を見降ろすので視野が広がり、登りでは目につかなかった点にも気づくことがある。とはいえ2合目まで降りてきた時点でなんの発見もなく、わたしたちは遭難者の発見を完全に諦め、貴重な土曜日休みを堪能すべく雑談に花を咲かせていた。  最初に気づいたのは唐沢だった。登りでは気づかなかったのだが、支沢が合流してくる出合に黄色い布のようなものがが落ちている。  急いで駆け寄ってみると、それはまぎれもなくスリングだった。スリングというのはロッククライミングで使うアイテムのことで、カラビナに通してプロテクション確保に使用する命綱的なアイテムだ。F岳にはもちろんそんなものを使う難所はないけれども、戦後に山を始めたベテランはどの山へいくにも意味もなくカラビナやスリングをじゃらじゃらとザックにぶら下げたがるご仁がいる。  スリングは真新しい蛍光イエローで、状態から見ても落ちてからそれほど経っていないようだ。もしかしたら正規の沢ルートから外れて、支沢へ迷い込んでしまったのかもしれない。スリングの落ちていたルート外の沢を見上げると、堆積した落ち葉が層をなしており、すぐに枯れ沢であることがわかった。拳大の岩が転がっているガレ場で、足元はかなり悪そうだった。  三人で相談の末、とりあえず支沢を遡行してみることになった。するとすぐに第二の落し物が見つかった。紫色のカラビナが落ちていたのである。これも経年劣化のようすは見られず、落とされてからそう日が経っていないようだった。  そのあともまるでわれわれを誘い込むかのように登山用具が一定間隔で落ちており、それがなんともいえず不気味だった。最初の「見つけた!」という高揚感は次第に鳴りを潜め、なにか人知を超えた魔境へ足を踏み込んでしまっている気分とでもいおうか。  やがてそれは見つかった。沢の出合から外れて道なき道を辿ること二十分、遭難者の遺体を発見したのである。それはまるで絶望の果てに命を落としたかのように、大きな岩に腰かけてうつむいたまま往生を遂げていた。  われわれは言葉を失ってしばし、呆然と立ち尽くしていたと思う。やがて唐沢がてきぱきと指示を出してくれて、わたしはようやくわれに返った。現場保全のために一人がここに残り、もう一人が伝令兼道案内としてA班のお偉方と警察・消防を連れてくることになった。最後の一人は沢の

この怖い話はどうでしたか?

f X LINE

chat_bubble コメント(0件)

コメントはまだありません。

0/500

お客様の端末情報

IP:::ffff:172.30.0.238

端末:Mozilla/5.0 AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko; compatible; ClaudeBot/1.0; +claudebot@anthropic.com)

※ 不適切な投稿の抑止・対応のために記録される場合があります。

grid_3x3 話題のキーワード

search

サクッと読める短編の怖い話 サクッと読める短編の怖い話

読み込み中...