
長編
山
匿名 2日前
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私の地元には、初心者でも登りやすいと人気の山があります。
冬が近付くと落ち葉が登山口を塞ぐほど降り積もるので、地元の人間はボランティアで集まり、箒や雪かきスコップで掃除をします。
その日も私含め、地元の人たちが落ち葉掃きやゴミ拾いをしていました。
私は登山口から100メートルほど離れた、近くに川が流れる場所でゴミを袋に詰める作業をしていたのですが、後ろから「こんにちは」と声をかけられました。
人の気配は感じられなかったので少しびっくりしましたが、振り返ると70代くらいの白髪が綺麗な男性が立っていました。
私も挨拶を返し、お散歩ですか?と聞くと、男性は「あなたの隣にいるんです、とても寒くて」と言いました。
妙な返答だなと思いつつ、男性は薄手のフリースとスラックス姿だったので、「もう冬になりますしダウンやコートを羽織らないと風邪を引きますよ。私もダウンを着ないと寒くて作業できないです」と言うと、男性は「これから山に行くんです」と答えました。
もう15時を過ぎていましたし、それにその様な軽装では危ないですよと言ったのですが、男性はスタスタと登山口に歩いて行ってしまいました。
なので作業をしている仲間(以下Aとします)に電話をして、ご老人が軽装でトレッキングポールも持たず登山すると行ってしまったので、注意してくれないかと伝えました。
その後10分くらいして電話があり、しばらく注意して見てたけど私が言ったようなご老人は来ていないとAは言いました。
山に行くとは言っていたけど登山ではなく付近を見て帰ったのかと考えましたが、帰るにしても私がいる場所を通る筈ですから不思議に思いました。
作業していたし気付かなかったのかなとあまり深く考えず、その日は終わりました。
一週間後、今年は落ち葉の量が凄いと連絡があり、またボランティアの要請を受けたので夕方ごろ現場に向かいました。
私と他に一人(以下Bとします)、登山口で落ち葉掃きをしていると、前に私が作業していた場所でゴミ拾いをしていたAから電話がありました。
グレーのフリースを着たご老人が山に行くと言って向かったので、日も傾いているし止めてあげてほしい、という連絡でした。
グレーのフリース… もしかして、と思いふと目線を上げると、あの男性が立っていました。
Bはギョッとした様子で男性を見ていました。
男性は、「山に行ったんです。とても寒い。寒くて寒くて凍えそうだ」と言
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