
長編
迷子
匿名 6日前
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「俺も思った」
「いや、遭難ですよこれ」
「そうなん、ですか」
コイツ、ダメだ。
「電波あります?」
「おお。バリバリ。電話するわ」
「もっと早くしてくださいよ」
「そう、そう。うん。じゃあ迎えに来てって言って。え?いや、分かんない。●●川の上流沿いの道路にいるんだけど、場所はちょっと分かんないや。そう、近くに来たら教えて。はい、じゃあね」
「先輩。妹ちゃんですか?」
「おお、何で分かった?」
「シスコン」
「うっせ」
「どうする? 待つか? それとももうちょっと歩くか?」
「まあ、こんな所で待つのもカッコ悪いし、歩きますか」
「だな」
しばらく歩く。
多分30分くらい。
時間の感覚など既にない。
「おい。あれ見ろ」
先輩が小声で僕に囁く。
道路下の川を指差している。
「何かいますか?」
「何だあれ?」
カカシ? 木にしては妙に白い。
「何ですかね? 流木が岩に引っかかってるんじゃないですか?」
「動いてるぞ。生き物だろ? 人か?」
「ちょっと細すぎないすか? 人にしては」
「おい、あっちにも居るぞ」
先輩の言うとおり、川の中にその白く細いものが何匹か立っていた。
どうやら川の中から出てきているようだ。
「ちょっと幻想的ですね」
「ああ、なんかキレイだな」
そんなことを二人で言いながら、段々増えてくるその白いのを見ながらタバコを吸っていた。
ppp先輩の電話が鳴る。
「うん、今どこ? え? 置いたけど、そうそう、いや、今ちょっと面白いのが見えてるからそれ見てる。え? クルマ通らなかったぞ? じゃあ下ってきて」
「どうしました?」
「釣竿とかは見つけたけど、場所分からないんだとさ」
「そうなんすか」
「一本道なんだがなぁ」
二人でその白いのが静かに増えるのを見ていた。
今ではそこかしこにいる。
川の中に溢れるほどの大群。
ゆっくりゆっくり下流に向かっているようだ。
「なあ、もうちょっと近くで見ねえ?」
「僕もそれ言おうと思ってたんですよ」
美しい。
そういう風に覚えている。
月の光かどうかは分からない。
その白いのに埋め尽くされて、川全体が発光しているようにも見えた。
吸い込まれていきそうな魅力がそこにあった。
pppppまただ、急な電話の音は頭にくる。
「はい、え? おお、サトさん。いやいや酔ってないです。今で
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- 面白怖い・・・いずみ