
長編
迷子
匿名 6日前
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すか? 道に迷っちゃって、ちょっと面白いの見てるんですよ。それです! そうです。川の中にしろい…」
『それを見るなっ!!!』
ケータイを通して僕にも声が聞こえた。
『おい! 今どこだ!?』
「わかんないです。道に迷ってんですって」
『じゃあ、その白いのはどっちに向かってる!?』
「ああ、下流方向~? ですね」
『じゃあ上に向かえ! いいか!? 道を登れ!!』
「街とは反対ですよ、それだと」
『いいから言うこと聞け!! ぶっ殺すぞ!!!』
「どうしたんすか? なんかサトさん怒ってません?」
「わかんね、すっげえ怒ってる」
『お前、言うこときかねえんだったら、妹ちゃんにアノことばらすぞっ!?』
「何すか先輩? アノことって? 聞きたいっす!」
「おい、上行くぞ」
先輩の目つきが変わった。
「えええ、登るんですかぁ、疲れますよ~」
足をどかりと蹴られた。
登山用のブーツで攻撃力も倍増だ。
「うるせぇ、行くぞ」
五分も歩くと、上から先輩の親父さんの運転するクルマがやってきた。
後少し待てば来たじゃないか、とブツクサ思っていた。
川を見ても白いのはもう居なくなっていた。
普通の山道の川だ。
僕は車に乗り込むと、もの凄い疲れを感じた。
先輩も同じだったようだ。
家に着いたら風呂にも入らずそのまま寝てしまった。
翌日の早朝、先輩に叩き起こされた。
サトさんが出社前に僕たちを訪ねてきたという。
「お。無事だったか」
サトさんは昨日の電話越しとは違って、とても優しく笑う。
「いや、本当にすいません。昨日帰った後寝てしまって着信気付きませんでした」
「気にすんな。あれ見たら最低でも二、三日寝込むらしいからな。若いってのは偉大だ」
「何なんですか? あれ?」
「ああ、なんか白ヤマメとか言われてるな」
「結構有名なんですか?」
「地元でそこそこ山に入るやつなら、一回は聞いたことがあると思うぞ」
「キレイでしたけどね」
「……お前。まあ、いいか」
「何ですか? 気になりますよ」
「……本当に、キレイだったのか?」
川の中に立つ白いカカシ。
細すぎるけど人間っぽい形はしてた。
足はぴっちり閉じてたな。
ってかゆっくり跳ねながら進んでた。
良く分からないけど、手?
妙に細い腕はあったな。
プラプラ揺れてた。
目と口の部分に空洞。
空洞? ごとりと
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- 面白怖い・・・いずみ