
ある冬の夜、大学生の女性は課題を終えるために図書館に残っていた。静まり返ったフロアに一人でいると、ふと耳にしたのは、誰もいないはずの書架の間から聞こえる微かな声だった。
「質問がある人は手を挙げて…」
その声は、まるで授業中のように鮮明だった。彼女は不安を感じながらも、気のせいだと自分に言い聞かせた。しかし、再び同じ声が響いた。
「質問がある人は手を挙げて…」
恐る恐る声の方へ近づくと、そこには何もない空間が広がっていた。だが、書架の影からは、まるで誰かがそこにいるかのように、薄らとした影が揺れているのが見えた。
彼女は震える声で、「誰かいるの?」と尋ねてみたが、返事はなかった。ただ、その時、声が再び聞こえた。
「質問がある人は手を挙げて…」
その瞬間、図書館の全ての本が一斉に音を立てて、空中に浮かび上がるのが見えた。それは無数の本だった。驚愕した彼女は一歩下がり、図書館を飛び出そうとした。しかし、ドアに手をかけた瞬間、背後から冷たい手が彼女の肩を掴んだ。
振り返ると、そこには一人の少年の姿があった。顔はぼやけていて表情は見えなかったが、その手は異常に細かった。その少年は静かに囁いた。
「質問があります…どうして僕たちはここにいるんですか?」
その瞬間、全ての本が一斉に落ちる音を立てた。彼女の視界は暗転し、書架の影たちが彼女を飲み込むように迫ってきた。そして――。
翌朝、図書館の職員が来ると、彼女の姿はどこにも見当たらなかった。ただ、机の上には、「質問がある人は手を挙げて」と書かれたメモが置かれていたという。彼女が残したものは、ただの言葉だけだった。彼女はもう、誰にも見えない存在になってしまったのだ。彼女が消えた後、図書館では、その声が何度も繰り返されるようになったという。声の主を探す者はいなかったが、誰かがまたその声を聞くことになるのだろうか…?
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