
人は、時に好奇心が後悔に変わることがわかっていて、どうして行ってはいけない場所に足を踏み入れるのでしょうか。
大学生の頃、サークルの飲み会の帰りでした。
腕時計を見たら、もう0時を回っています。
「このまま帰るのもな」
そんな空気になって、誰かが「少しドライブしよう」と言い出して、それがいつの間にか「じゃあ肝試しっぽいことしない?」という流れになっていきました。
その場にいたのは私を含めて3人でした。
Aは怖い話が好きで、こういう流れになると必ず乗ってくるタイプ。
Bは心霊現象を完全否定するタイプで、「幽霊がいるなら証拠を見せろ」と平気で言う人でした。
私は霊感はほとんどなく、どちらかと言うと懐疑的でした。強いて言えば「嫌な気配」を感じる程度です。
Aが言いました。
「昔、観光客が来てた建物が山の方にあるらしい。今は廃れてて、肝試しっぽくなってるって」
Bが笑って、
「行くだけ行ってみようぜ。何も起きないから」
今思えば、あの瞬間に断れたはずです。
でも断れませんでした。
「やめとこう」が言えないまま、私たちは車に乗りました。
山道は暗く、ヘッドライトが照らす範囲だけが現実みたいでした。
途中、遠くに街の明かりが見えましたが、それもすぐに背後へ流れて消えていきました。窓の外はどんどん黒くなって、周囲に民家の気配もなくなっていきました。山奥に入り込んでいるのがはっきりわかりました。
到着したのは腕時計で1時15分ごろでした。
建物は、昔の観光施設だった名残がありました。
今は落書きだらけで、窓ガラスは割れていて、入口付近に破片が散らばっていました。踏むと乾いた音が大きく響きます。
入ってすぐ、空気が変だと感じました。
湿っていて、重い。
息を吸うと喉の奥が少し詰まるような感じがしました。
中は思った以上に広く、通路がぐるっと回るような構造でした。暗闇の中で方向感覚が狂いやすい形です。音がやけに響きました。
入口近くに、開いたままのノートが落ちていました。
雑に捨てられているというより、妙に「置かれている」感じでした。受付の台帳みたいに。
Aが「何これ」と笑っていましたが、誰も真剣には見ませんでした。
私もそのときは、ただのゴミだと思いました。
奥へ進んでしばらくして、私が最初に違和感を覚えました。
足音が増えるんです。
反響だと思いました。廃墟なら音は響きます。
でも、私たち3人の足音に混ざって、もう1人分あるように聞こえました。
「今、足音しなかった?」
後日談:
- 多くを語らないスタイルでございます。
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