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お題 短編
4階
4階
お題 短編

4階

1ヶ月前
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エレベーターの「4階」を押した。

扉が閉まりかけた瞬間、白い手がスッと差し込まれて止まる。入ってきたのは、薄いベージュのコートの女。髪は濡れていて、雨の匂いがしない。目だけが乾いていた。

女は何も言わず、ボタンの列をじっと見たまま、ゆっくりと「4」を押す。

僕が押したのと同じ階だ。

「同じ階ですね」と言おうとして、やめた。女の指が、ボタンの上でほんの少し震えていたから。震えというより、待っているみたいに。

到着。扉が開く。

女は降りない。僕が降りる。背中に視線が刺さる。

廊下はいつもより暗い。足音がひとつ遅れて重なる。振り返ると、女が三歩後ろにいる。いつの間に降りた?

「…あの、どちらの部屋ですか」

女は僕の肩越しに、僕の部屋のドアを見ている。睫毛の影が異様に濃い。

「ここ」

そう言って、女はドアの横の表札を指差した。僕の苗字が書いてある。

「え? いや、ここ僕の――」

女が笑った。声は出ない。口だけが「やっと」と動いた気がした。

僕は鍵を探る。ポケットの中で金属が冷たい。差し込む。回る。いつも通りに。

カチャ。

ドアが少しだけ開く。

その隙間から、内側のチェーンが、ぶらんと揺れているのが見えた。……おかしい。僕はいつもチェーンなんて掛けない。

女がその隙間に、顔を寄せた。

「ただいま」

次の瞬間、内側から、子どもの手が伸びてチェーンを外した。小さくて、白くて、爪が黒い。

女は僕を見ずに、部屋の中へ滑り込む。

僕は固まったまま、開いたドアの隙間を覗く。玄関の三和土に、濡れた足跡がふたつ、奥へ続いている。女の分と――もうひとつは、僕の靴よりずっと小さい。

背後で、エレベーターの到着音が鳴った。

チン。

そして、廊下のどこかで、同じベージュのコートが擦れる音がした。今度は、僕のすぐ後ろで。

「4階、ですよね」

さっきと同じ女の声。

僕の肩に、乾いた指が置かれた。

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はじめまして、よろしくお願いします。

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