
小学生の頃、よく母とともに山奥の温泉に行っていた。
父や他の兄弟は留守番か他の場所に出かけて、母と俺の2人で行くことが多かった。
母には持病があり、山奥のとある温泉に行くと母の体調が良くなるからだと聞いたことがあるが、年に2回程行くなかで何がどの程度よくなるのかはよく分からなかった。
効果があるかは別として、山奥の温泉で気分転換することがストレス解消になっていたのかもしれない。
東京の23区に住んでいた俺の家には車はなく、普通電車で田舎の駅まで行き、そこからバスに乗って山奥の温泉まで来ていた。
山奥の温泉周辺は本当に何もない山の中だった。
温泉に来ると、長閑な景色やゆったりとした客室、居心地のいい温泉に嬉しい気持ちになるが、時間が経つとやることがなく退屈になってくる。
俺はいつも部屋で横になったり、温泉施設の中をぐるぐると回っていた。
母は温泉でゆっくりしたあと布団のなかでずっと休んでいた。
母はこのようにして日頃の溜まった疲労やストレスを癒しているらしい。
そのせいか、いつも帰るときは穏やかな顔をしている母だった。
・・・小学6年生の夏。
いつものように温泉にゆっくり浸かったり、部屋で少し昼寝をしたりしたあと、少し暇になった俺は広間に来て外の景色を眺めていた。
広間は畳の上に座布団や座卓の並ぶ広い和室だった。
ふとあたりを見渡すと、俺と同い年くらいの女の子と目があった。
山奥の温泉客は年寄りや中年が多く、このときも同年代の子供の宿泊客は他にいなかった。
女の子は可愛らしい顔に肩くらいまでのおろした髪、綺麗な服装の魅力的な子だった。
俺は女の子を見ていると、女の子も気づいて俺の方を見た。
そして女の子は俺の方に近づき
「こんにちは。ちょっとお話しない?」
「うん。いいよ。」
「どこから来たの?」
「東京からだよ!」
「東京?いいなぁ!何年生?」
「6年生だよ。」
「そうなんだ。私は5年生。それで・・」
初めて会ったばかりなのに、女の子は積極的で直ぐに打ち解けていった。
彼女は朝子(仮名)、温泉のある県内から来た子だった。
朝子も家族と来たが、俺と同じようにやることが無くて暇していたらしい。
「あそこにいるの私のお母さん。」
朝子が指を差した方を見るとそこには中年の女性がいた。
ただ、女性はなぜかさっきからここにいる朝子の方を全然見ていなかった。
少し不思議に思いながらも朝子としばらく話したり、館内を散策したりしていた。
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